紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています

 あれからわたしは直接ヴォーグの店長に会って事情を説明して、明日はお休みをもらった。お母さんはお父さんが待ってるからと言って静岡に、その日のうちに帰っていった。わたしは翌日の朝の新幹線で静岡に帰省した。お昼前に到着すると、すぐにお父さんが入院している大学病院へと向かった。面会時間は十三時からだったので、カフェで朝食兼昼食をすませてから、お父さんがいる病室に向かった。

 お父さんは個室に入院していた。最初は大部屋にいたらしいが、他の人がいると落ち着かないといって個室に変えてもらったそうだ。お父さんには昔からそういう神経質なところがあった。


「おお、紫、何しに来たんだ?」

 わたしの顔を見たお父さんは読んでいた新聞紙から顔を上げ、開口一番そう言った。


「お父さんが心配で様子を見に来たに決まってるでしょう」

「……まったく初枝には言うなって口止めしていたのに」

「お母さんは悪くないでしょう? ……て、あれ、お母さんまだ来てないの?」


 お母さんも面会の時間までには来ると昨日言っていたのにと思った。


「洗濯に行った」

「そうなんだ。ところで体調は大丈夫なの?」

「なんともない。お前が心配するほどのことじゃない。さっさと帰れ」


 お父さんは犬でも追い払うようにしっしと手を振った。


「もう、お父さんったら」

わたしはため息をついた。そのとき、お母さんが戻ってきた。紙袋には乾いたばかりの洗濯物が入っている。互いに目配せすると、わたしはお父さんを見た。