月曜日のお昼過ぎ、遅めの昼食に行っていた店長が慌てて戻ってきた。
「店長、どうしたんですか? まだ休憩時間残ってますよ」
「それどころじゃないの。樫間さん、小沢さん、大変よ。今からオーナーが店の視察に来るって」
「え、ヴォーグの?」
「そう。急いでお茶の準備をして。あと休憩室を片付けて」
「はい」
小沢さんが休憩室の片付けに入ったので、わたしはお茶を準備することにした。来客用の宇治から取り寄せたお茶を手に取り、電気ポットに水を入れて沸かし始めた。
ヴォーグは、美容業界でもその名を知られた藤和コーポレーションが運営する系列店のひとつだった。そのオーナーが来るというので、さすがに緊張した。
「二人とも、戻って」
店の入り口から店長の声が聞こえた。急いで受付に戻ると、エスカレーターを登ってくる人影が見えた。わたしはドキッとした。ジャケットにノーネクタイの、おそらく四十過ぎの男性がこちらにやってくるのが見えた。写真でしか見たことはないが、あれが藤和コーポレーションの社長水谷水谷貴司に違いない。整髪料で髪をなでつけた、どこか傲慢さを感じさせる男だった。
「ふーん、ここがヴォーグ、ね」
店長が急いで名刺を取り出し、水谷社長に渡す。
「ヴォーグの店長の佐倉です。本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます」
しかし、水谷社長は名刺を片手で受け取ると、掌でくしゃりと丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。
「!」
さすがの店長も呆然としている。わたしも唖然として言葉を失っていた。水谷社長に付き従ってきた男性たちは、こういうことに慣れているのか、気まずそうにしながらも何も言わなかった。
「それより店の中を案内してよ」
「は、はい。かしこまりました」
「店長、どうしたんですか? まだ休憩時間残ってますよ」
「それどころじゃないの。樫間さん、小沢さん、大変よ。今からオーナーが店の視察に来るって」
「え、ヴォーグの?」
「そう。急いでお茶の準備をして。あと休憩室を片付けて」
「はい」
小沢さんが休憩室の片付けに入ったので、わたしはお茶を準備することにした。来客用の宇治から取り寄せたお茶を手に取り、電気ポットに水を入れて沸かし始めた。
ヴォーグは、美容業界でもその名を知られた藤和コーポレーションが運営する系列店のひとつだった。そのオーナーが来るというので、さすがに緊張した。
「二人とも、戻って」
店の入り口から店長の声が聞こえた。急いで受付に戻ると、エスカレーターを登ってくる人影が見えた。わたしはドキッとした。ジャケットにノーネクタイの、おそらく四十過ぎの男性がこちらにやってくるのが見えた。写真でしか見たことはないが、あれが藤和コーポレーションの社長水谷水谷貴司に違いない。整髪料で髪をなでつけた、どこか傲慢さを感じさせる男だった。
「ふーん、ここがヴォーグ、ね」
店長が急いで名刺を取り出し、水谷社長に渡す。
「ヴォーグの店長の佐倉です。本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます」
しかし、水谷社長は名刺を片手で受け取ると、掌でくしゃりと丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。
「!」
さすがの店長も呆然としている。わたしも唖然として言葉を失っていた。水谷社長に付き従ってきた男性たちは、こういうことに慣れているのか、気まずそうにしながらも何も言わなかった。
「それより店の中を案内してよ」
「は、はい。かしこまりました」
