古(いにしえ)より日本は、ふたつの世界で成り立ってきた。 人々が暮らす表舞台、〝現世(うつしよ)〟と、人ならざる者──妖(あやかし)や神、そして一部の選ばれし人のみが住まう、〝帝都(ていと)〟だ。 ふたつの世界は決して交わることはないと思われた。 人は人ならざる者の怪異的な力に怯え、人ならざる者もまた、人の未知なる知恵を恐れたからだ。 しかしあるとき、人ならざる者の中でも特に強大な力を持つ者が現れた。 それは、人ならざる者でありながら、人の女を花嫁として迎えた妖だった。