「いいから大人しく、俺に抱かれていろ」
しかし咲耶は吉乃を抱きかかえたまま案内所を出ると、路地を過ぎた先にある、花街の仲之町通りに降り立った。
仲之町通りは大門から真っすぐに延びた、花街の中央にある目抜き通りだ。
両脇には遊女がいる見世に客を紹介する【引手茶屋】が並んでいて、昼夜を問わず人目がある。
(どうしよう……。すごく、見られてる)
貧相な人の女を、眉目秀麗な軍人が抱きかかえて歩いていたら、注目を浴びて当然だ。
羞恥心から吉乃は必死に下ろしてほしいと懇願したが、咲耶はやっぱり聞き入れてはくれなかった。
「わ、私のせいで、咲耶さんまで好奇の目で見られてしまいます」
「そんなことは、どうでもいい。寧ろ俺は見せつけているんだ。お前は俺のものだと、帝都吉原に住む者たちに知らせている」
「え……?」
その上、返ってきたのは思いもよらない返事だった。
(私を自分のものだと知らせるって、どういうこと?)
咲耶とは、ついさっき初めて会ったばかりなのに。
どうしてそんなことを言われるのか、吉乃にはさっぱりわからなかった。



