「あ、あの、事情聴取って……」
「言葉の通りだ。先ほども言ったように、お前にはまだ聞きたいことがある。とりあえず、場所を変えるぞ」
そうして咲耶は吉乃の後ろにまわり込むと、吉乃の手を縛っていた縄を切った。
数時間ぶりに腕が解放されて安堵するべきなのに、咲耶の変貌を目の当たりにした吉乃は事情聴取という言葉に不安を抱き、咲耶の顔を見ることができなかった。
「腕が痛むか?」
そんな吉乃に、咲耶が優しく問いかける。
「い、いえ……大丈夫です」
顔を上げた吉乃は、慌てて首を左右に振った。
「そうか。お前に怪我がなくて、本当に良かった。だが、痛むところが出てきたらすぐに言え。我慢する必要はないからな」
穏やかな笑みを浮かべた咲耶は、大蜘蛛を叩き斬ったときとはまるで別人だ。
たった今、吉乃は絆されてはいけないと自分を諫めたばかりなのに、こんなふうに優しく声をかけられたら戸惑わずにはいられなかった。



