遊郭の花嫁

 

(まさか、咲耶さんは神威の人なの?)

「貴様はここで長く遊女の案内人を務めていたというのに、とても残念だ」


そこまで言うと咲耶は徐に、腰に差している刀の柄に手を添えた。

と、その瞬間、それまで綺麗な薄紅色だった咲耶の髪が闇色へと変わりはじめる。

瞳の色も漆黒だったのに、燃えるような紅色に変化した。


(な、なんで──?)


吉乃は咲耶から目が離せなくなった。

それは決して良い意味ではなく、あまりの恐怖に身動きが取れなくなってしまったのだ。


「お、お待ちください! もう二度と同じ過ちは犯さないと誓いますので、どうかご慈悲をお与えください!」

「二度と同じ過ちは犯さない、か。だが、俺の聞き間違えでなければ、貴様は帝都を統べる帝の地位を手に入れるなどと(うそぶ)いていたような気もするが」


黒く邪悪な(もや)をまとった刀身を抜いた咲耶が目を細める。
 
その靄は咲耶の全身を包み込み、禍々(まがまが)しい空気を作り上げた。