「咲耶さん。あなたは一体――」
「まだ聞きたいことは色々とあるが、この話の続きは、またあとにしよう」
「え……」
「どうしても先に、片付けなければなぬ仕事がある。少しだけ待っていてくれ」
しかし、吉乃の言葉を遮った咲耶は、名残(なごり)惜しそうに吉乃から視線を外した。
そしてゆっくりと立ち上がると、それまで息を殺してふたりを静観していた大蜘蛛へと目を向けた。
「さて、大蜘蛛。貴様とは、どこまで話をしたかな」
そう言った咲耶の目からは、たった今の今まで吉乃に向けられていた温かい眼差しは完全に消えていた。
ゾッと背筋が凍るような冷酷な視線と声に、大蜘蛛が恐怖で身を硬くしたのがわかった。
「い、いえ、私は――」
「色々と言い訳を重ねるのは結構だが、帝都内で争いごとを招いたものは有無を言わさず〝神威〟に粛清される。それはお前も、よくわかっているだろう?」
神威──。今、咲耶は確かにそう言った。
神威とは、現世でいう警察組織だ。
その名は畏怖の対象で、彼らは帝都の秩序を護るためなら手段を選ばぬ軍隊として有名だった。



