「吉乃という名も、薄紅色の瞳を持つお前によく似合っている」
「あ、あの、あなたは……」
「俺の名は、咲耶という」
「咲耶、さま?」
「お前は、俺の名を呼ぶのに〝様〟などつけなくともよい」
「では……咲耶さん、とお呼びしても?」
「ああ。お前に名を呼ばれると心地が良いのも、俺たちを繋ぐ〝縁〟故か」
白い軍服をまとった美しい男――咲耶はそう言うと、再び柔らかに目を細めた。
対する吉乃はなんと返事をしたらいいのかわからず固まってしまった。
(私に名前を呼ばれると心地が良いとか、私たちを繋ぐ縁ってなんのこと?)
「しかし、まさかこのような場所で出会えるとは思ってもみなかった。巡り会えたことを幸運に思いたいところだが――手放しでは喜べないのが残念だ」
戸惑う吉乃を前に、咲耶は寂し気な表情を浮かべる。
黒曜石のように黒く澄んだ瞳の中には吉乃だけが映されていて、吉乃はまるで、ふたりだけの世界に閉じ込められたような気分になったが、どこか陰のある咲耶に一抹の不安を覚えてしまった。



