遊郭の花嫁

 

「なぁ、名を聞かせてくれ」

「え……あっ! す、すみません。吉乃と申します!」

「吉乃?」

「は、はい。私の生まれ故郷の木花村(このはなむら)に、村を護ってくださる千年桜の伝説があって。その桜の木にあやかって吉乃という名をつけたと、亡き両親が教えてくれて──」


動揺のあまり、余計なことまで口走ってしまう始末だ。

吉乃は慌てて口を噤んだが、話を聞いた男はまた驚いたように目を見開いたあと、唐突に穏やかな笑みを浮かべた。


「……なるほど。そういうことか」

「え?」

「先ほどの毅然(きぜん)とした物言いも、その身に受け継がれた清らかな魂あってのことだったのだな」


予想外の微笑みと言葉を向けられた吉乃は、思わずキョトンとして固まった。


(私の身に受け継がれた清らかな魂って……?)


一体、どういうことだろう。