「その度胸は、遊女として生きていくための武器になるだろう。だが、ここ、帝都吉原では自己犠牲の精神など持っていても、己の首を絞めるだけだぞ」
そう言うと男はすぐに吉乃から視線を外してしまったが、凛として佇む様は精悍で、この世のものとは思えぬほど美しかった。
「あ、あっ、あんたは!」
と、男を見た大蜘蛛が恐れおののいた様子で、吉乃に伸ばしかけた腕を戻した。
ついでに見張り役を務めていた人ならざる者たちも短い悲鳴を上げ、怯え切った様子で縮こまる。
(なんで? 急にどうしたの……?)
「さて――、さっさと済ませてしまおうか」
「御用改めである! 謀反者どもは神妙にお縄につけ!」
そして男の言葉を合図に、男と同じ軍服をまとった者たちが案内所の中になだれ込んできた。
軍服を着た者たちは大蜘蛛が張り巡らせた糸を刀で斬り、捕らえられた女たちをあっという間に解放していく。



