「俺の彼女になんか用?」



「……ぇ?」



「っ、……杉本」



わたしの後ろから来ていた杉本は、わたしと夏月を交互に見た。



「……丁度良かった。みくと付き合ってるってホントか?」



なぜか喧嘩腰(けんかごし)の夏月。



「そうだけど?」



いつも通り涼しい顔した杉本。



……なに、この空気。



「その割に、みくはお前のこと苗字で呼ぶんだよな。こいつ、仲良くなった奴はほとんどすぐに名前で呼ぶのに」



ぎくり……っ。




「……。俺も、名前で呼べって言ったけど、実胡は恥ずかしいんだってよ」





睨み続ける夏月をしばらく見つめた杉本は、鼻で笑った。




「それより、いつまで実胡に引っ付いてんの?ただの幼なじみくん?」




「……っ」




夏月が思いっきり息を呑んだ。正確には、何かに詰まった、みたいな……?




急に動かなくなった夏月を一瞥(いちべつ)した杉本は、わたしの手を掴んで歩き出した。



















「杉本!ちょっと止まって……!」




「……お前さ、どれだけ俺に迷惑かければ気が済むわけ?」




「……っ、別に、杉本が居なくたって、あれくらい……」



「対処できたって?どこがだよ」



正論すぎて、ぐうの音も出ない……。




「……すみません」



「はぁ……」




でっかいため息つきますね、杉本さん。本人の目の前で。




「……海哉って、これからはちゃんと呼べよ」



……ん?



「あと、学校内で話さなさすぎて疑惑が浮かび始めてるから、ある程度はお前からも話しかけて。俺も、極力そうする」




「え、ちょっと待って……。何の話……?」



「今後、こういう揉め事が起こると面倒だから、なるべく原因は潰しておこうと思って」




ってことは、杉本はまだ協力してくれるってこと……?




「え、いいの?」




「いいもなにも、それが約束だろ。ただ、めっちゃ面倒なことを無償で付き合ってやってんだから、少しは俺の要望聞けよ」





杉本……海哉って、案外いい人なのかも……?