ここまでこんな状況が続いていると、信じられないというのが正直な感情だ。

「もしもし……」

 自分でも驚くほど声が震えていた。


「ああ…… 俺だ」

 彼の声だ。

「社長?」

「ああ」

 やっぱり間違いない、彼の声だ。
 そう思ったとたん何かが弾けた。


「無事なんですか!!!! 何処にいるんですか!!!!」


 さっきの震えた声が嘘だったように、恐ろしいほどハッキリとした声が飛び出た。


「そんなに怒るなよ。無事だ。ケガもしていない。もしかして、心配してくれたのか?」

「当たり前じゃないですか…… 日本に戻って来られたんですか?」


 私は、車のドアに寄りかかると、そのままコンクリートの上に崩れるように座り込んだ。

 

「バタバタしていて、やっと戻って来れた」


 スマホから聞こえていた声が、周りの音と重なって聞こえているような気がしたのだが……

 スマホを握りしめてうずくまっていると、目の前に、大きな影が出来た。

 恐る恐る、顔を上げた。


 目の前に現れたっ姿に向かって言った。

「どうして?」