その星、輝きません!

「はあーーーっ」

 彼の去って行く後ろ姿に、思わず大きなため息が出てしまった。

「どうして明日も予約が入ったんですか?」

 あかねが、驚いた声を上げる。


「私が聞きたいわよ。暇なんじゃない?」

「いくら暇でも、連日、自腹でカウンセリング入れるかな?」

 ワーカーの薫が、不思議そうに首を傾げる。

「すごく不安定なんですかね?」

 美奈が言う。


「うーん、不思議な感じはあるけど、それほど不安定には思えないな」

「なんだろうね? それにしても、あんたが連日受けるなんて、珍しいわね」

 薫が、パソコンの画面を見ながら言った。


「強引だったから仕方なかったのよ。どちらにせよ東京に帰るみたいだから、明日で終わりよ」

 そう言って、私もパソコンの画面を開いた。


 笑わない…… 何か引っかかる。
 楽しい事がないのか? 笑い合う相手が居ないのか?
 今、私が気にしても仕方のない事だ。


 次の日……
 今日は、朝からカウンセリング続いていた。
 後一人、あの男だけだ。

 ペットボトルの水を口に含み、気持ちを整える。
 カウンセリングルームのドアを開けると、すでに彼は廊下のソファーに座っていた。

「お待たせしました。どうぞお入り下さい」

 こちらに目を向けた彼は、すっと立ち上がった。立っても座っても、ふとした動作さえ綺麗で堂々としている。

 今までも、外見では分からない不安やトラウマを抱えている人を何人も見て来たが、どうしても彼がカウンセリングに来る意図が分からない。

「どうぞ」

 昨日と同じ椅子を促した。