その星、輝きません!

「そうですか? お話相手になれればよいのですが、難しいお話は苦手なもので、すみせん」

  やんわりと、今回限りの方向である事を伝えてみる。



「ええ、そうでしょうね。別に難しい話をしようと思って伺った訳ではないので……」

 彼は、作ったように口元を上げるだけの笑みを見せた。バカにされているのが良く分かる。


「そうでしたか。それなら安心しました」

上から来るのであれば、下で受け止めるだけだ。きっと、興味本位で来ただけ、一度だけのカウンセリングと腹をくくった。


「アメリカはどちらに行かれていたのですか?」

「ロスです。契約にトラブルがあって、結局三週間も滞在してしまいました」

「ロサンゼルスですか? お仕事で滞在されるなんて憧れます。私は、一度観光で行っただけなので……」


「海外旅行がお好きで?」


少しだけ、彼の目線が上がった気がする。
これだ!この話で時間を稼ぐ事を決めた。カウンセリングとしては失格なのは重々承知だ。


「ええ。旅行へ行くために仕事しているようなものなので。あっ、すみませんこんな発言ダメですね」


「いいえ。ロスではどちらへ観光に?」


「もう、ずいぶん前ですけど、ユニバーサルとディズニーへ。ビバリーヒルズも行きました」

「僕は、仕事で行くだけなので、一度も行った事はないですね」

「一度行ってみては? とても楽しかったですよ」

「ふっ」

 鼻で笑われた気がする。


「お忙しくて、そのような時間はないですよね」

「まあ…… 他に行ってみたい所はあるんですか?」

「沢山ありますよ。フィジー、タヒチ、バリ島、あっオーストラリアのパース、イタリアも。あーきりがないです。でも、今の気分やっぱり南国かな? 暖かい所がいいです。寒いと凹むので。すみません、私の事ばかり……」

「いいえ。僕も興味があるので……」


 しばらく、海外の話が続いた。彼の時間潰しになったのなら良としよう。わたしも、しらない国の情報得られたしと、ほっとしたのだが……


「一つお聞きしても良いですか?」

 彼の表情が、少し曇ったように見えた。