部活が終わり家に帰ろうとした時
「唯都〜!!」
翠星先輩が俺の事を呼んだ
「はーい!」
俺は元気よく返事をして走っていった
「これからさ,行きたいとこがあるんだけど時間あるか?」
今日の予定を思い出す。帰って...ご飯食べて...寝て...。することなんてこんなもんしかない。
俺は迷わずに
「あります!!行きたいです。」
といった。すると先輩はにっこりと笑って
「着いてこい」
と言った。

何分ぐらい歩いただろう...そこは俺の見覚えのある場所だった。
「ここって...」
「お察しの通り俺の家」
先輩の家には1度だけ来たことがあった。あの時は練習試合があるから自転車を停めさせてもらったんだっけか...
「ちょっとここで待っててくれ」
そう先輩は言って家の中へ入っていった。先輩を待っている間,もう一度友紀の動画を見た。
その時俺はふとこう思った。
なんで友紀みたいな優しくて元気な人が亡くなって,犯罪者や悪人が生きているのだろうか,と。
でもきっとこれを誰かに言ったら犯罪者や悪人にも人生があってその人だって誰かを救っているかもしれないと言われるのだろうと思ったから俺はこれを誰にも言わないことにした。友紀だってそんな事を言わないでと言ってくれるから...。そう思ったら俺はなぜだか許す事が出来た
じゃあ...友紀を轢いて逃げた犯人は...?未だに逃げていて,友紀を轢いたのにその事から逃げ回ってる人は...?許せるはずなんてない。俺はきっとことの人の事だけは一生許せない。
そんなことを考えていたら
「唯都〜!!待たせたなぁ〜!」
と先輩が戻ってきた。
「いやいや全然...大丈夫です。」
普通に答えた...つもりだった...
「なんかあったのか...?」
先輩は本当に周りをよく見ている。その人自身を見ている。そして...誰よりも何かあった時気付いて声を掛けてくれる。
「まぁ...ちょっとだけ...。でも,大丈夫っすよ」
俺は何を思って先輩に嘘をついたのだろうか。“心配をかけたくない”?“負担になりたくない”?いや...きっと俺は,“弱い所を見せたくない“だけだ。
「なんかあったんならそれ,教えてよ」
先輩には敵わねぇな。そう思った俺はさっきまで考えていた事を全て話した。
「あ〜ちょっと理解出来る。やっぱりしんどいよな。許せねぇよな。」
「はい...」
「ま,唯都の中では許せねぇでいいと思うけどなぁ...仕方ねぇじゃん?許せって方が無理だろ。ただ,殺しに行くとか殴りに行くとかそういうのは違ぇと思うけど,心の中で許さねぇ...ゆるせねぇって考えときゃいいだろ。そういう考えるってのは,思うってのはお前の自由だ。」
こんなに嬉しい言葉を,こんなに優しい言葉を貰えるなんて思ってなかったから,だから俺は少し,涙が出た
「今はまだ,泣いてもいいんだ。」
「ありがと...うござ...います」
俺はきっと泣き足りていない。だから,まだ,泣いてしまうのだろう。
「なぁ唯都,泣きながらでいいからさ,見て欲しい,受け取って欲しい物があるんだ。いいか?」
何かは分からない。先輩が何を渡そうとしているのかは分からない。でも,先輩なら俺の為になるものを渡してくれる。そう信じていたから,俺は首を縦に振った。
「これ〜〜〜から貰ったもの。」
え,聞き間違いか?俺が単にそう聞きたくてそう聞こえただけなのか?もし,間違っていないのなら...先輩は




「これ,友紀ちゃんから貰ったもの」



そう言っていた。
「ゆき...って言いました...?」
「そうだよ。」
友紀から...先輩が...?何...を?
分からない。分からないからパニックになっているのだ。先輩から受けとったものはCDだった。友紀の,未緒の絵があるCDを
なんで俺に,CDを…?
「それ,また聞いてあげて。最後まで,丁寧に...ね?」
俺はCDを抱きしめて頷いた。そして心から
「ありがとうございます。」
と言った