ゆりの、昔のこと...?
亜子と私は何が何だかわからず、2人で顔を見合わせて首を傾げた。
まだ知り合って間もない私はそんな込み入った話をするほどの間柄でもない。
ただ、向こうが一方的にちょっかい出してくるだけ。
亜子もあれだけ仲良くはしていても他人の過去をズケズケと聞いてくるような性格じゃない。
莉音ちゃんは私たちの顔色を伺いながら、やっぱり...と声を漏らした。
そして続けるように話し始める。
「夏くんは昔、1人の女の子にほぼ一目惚れ同然の恋をしたの。でもその女の子には深い深い心の傷みたいなものがあって、夏くんは受け入れて貰えなかった」
賑やかな店内の音楽も楽しそうに会話する人達の声もさっきまでは心地いいほど聞こえていたのに。
今はなぜか莉音ちゃんの言葉だけが頭に響く。
