何も届かないのは本当にもどかしい。
その思いをもうどれくらいしているんだろう。
そう思うと、少し胸が痛む。
「あ、あの〜、めちゃくちゃ困惑してるんだけどこれって亜子だけ?」
亜子は空気を壊さないようにおずおずと手を挙げ皆をちらりと見る。
無理もない。
だってこの場でゆりが男って知らないのは亜子だけだし。
それに気づいてかずっと黙って聞いていた真央がハッとしたように口を開く。
「もしかして市藤ってナツが男だって知らなかった!?」
「え、あっ、え?だって2人は昔からの知り合いだから当たり前だとして、みーちゃんも知ってたの!?」
亜子のあまりの驚き様に私は頷いて見せた。
その後真央は、学校じゃ他に知らない人も居るかもだけどな、と付け加えた。
