ちらりと横目で亜子を見ると、亜子は眉間に皺を寄せて顎に手を置いていた。
誰も口を開かず、莉音ちゃんの次の言葉を待つ。
「だから、夏くんはその子のために...本当の自分を隠して女の子の格好をして。周りにどれだけ偏見の目で見られてもいつかその子に会えた時、自分が1番に支えられるように」
それって...。
前に私が盗み聞きしちゃった時のー。
気になってる人、の事だよね。
やっぱり本気でその子の事が好きなんだ...。
好きな子のために高校生になった今でも女装してるなんて、よっぽどの覚悟がないと出来ないだろうし。
でも莉音ちゃんの言い方だとその女の子とは今は離れ離れだってこと?
それじゃあ、ゆりの気持ちはもうどれくらいその女の子に届いていないのかな。
自分の頑張りも、努力も、気持ちも。
