リングに導かれるままに部屋を出て、ある部屋に入ると、大きな水の入ったカプセルがあった。それも二つ。
人が入れるくらいの……

「あ…!!」

『はい、中に人間がいたのです。』

男の人と女の人。水の入った隣同士のカプセルに、二人とも眠るように入っていた。私よりずっと年上に見える。

「どうしてこんなところに…!!出してあげなきゃ!!」

私は必死になり、リングに言った。でもリングは首を横に振る。

『いいえ、ネオ。出してしまったらもとには戻らないかもしれないのです。特殊溶液…特別な水が入っている。何年入っているのか私には分かりません。出して何かあっても、私では治すことは出来ないのです。』

「そんな……」

リングは穏やかな顔で私に言った。

『この方たちはネオと同じ人間です。聞こえないかもしれませんが、出発前にぜひ挨拶をしてあげて下さい。』

私はじっと二人を見つめた。
なんだか鏡で見た時の私に、少し似ている気がした。

「…この人たち、誰なのかな……」

リングは何も言わない。でも水の加減か、私に向かって笑ったような気がした。

「え…と…はじめまして、ネオです…。今から大事な友達のリングと、私たちを助けてくれる人を探してきます。お兄さん、お姉さん、待っていて下さい。」

『ネオには、そう見えるのですね。』

「え??」

リングはまた何も言わなくなった。
また二人を見ると、水の中の二人の顔は、なんだかとても穏やかに見えた。


『この服を着てください。』

「うん。」

薄手のピッタリした服。着るとなんだか体に膜が張った感じがした。

『それからこれを。』

軽い、頭から両耳に掛ける物(ヘッドホンのような物)を着けると頭の方も前も守られた感じになる。でも耳に着けたから、廊下からいつも聞こえる小さな機械音なんかの周りの音があまり聞こえなくなった。

「リング、音があまり聞こえないの…怖い……」

すぐ、リングの声が私の耳に当てたものから聞こえた。

『慣れないかもしれませんが、私の言葉はその機械から聞こえるようにしました。これなら距離が離れていても私の言葉は聞こえます。周りの音もすぐに聞こえるように設定しましょう。』

リングが言うとすぐ、周りの音も聞こえ始めた。

「…あ。」

『聞こえましたか?』

「うん!ありがとう、リング!」

それからしばらく研究所内を歩き回り、着ているスーツの様子を確かめて、やっと出発の時になった。