劇は終わる。

「わあっ…!」

お姫様は、劇に出てきたお人形たちが最後のおじぎをするのを向こうの国から画面で見ながら、パチパチと小さな手を何度もたたいた。

「ありがとうございました、楽しかったです!王子様とお姫様は、幸せになったんですね!よかった…!」

前には途中までしか見られなかったその劇は、楽しみにしていた私の気持ちを満たしてくれた。

『皆さん、本当にありがとうございました。』

みんなでジペットさんやお人形たちにお礼を言う。

『楽しんでもらえてよかったよ!お姫様にも見ていただけるなら、またお話を作らないとねえ。』

ジペットさんは嬉しそうに笑った。

「…そうだ!ねえリング、ジペットさんに、眠りの王子様のお話、教えてあげようよ!」

『眠りの王子、ですか?』

リングは私の言葉に首を傾げる。私の言いたいことが伝わらなかったらしい。

「ほらリング、あるお城で目覚めを夢見る、お姫様や国を救った王子様のお話だよ…?みんなを救って眠りについた、優しい王子様の…」

『そんなのがあるのかい!?面白そうだ!ぜひ教えておくれ、ふたりとも!』

ジペットさんは私たちに嬉しそうにたずねた。
お姫様は何も知らないためか、分からない様子で困っている。

「お姫様には、人形劇を見てもらうまでナイショ、です。…ね、リング…?」

リングは分かったらしい。考え事をしていた顔が、すぐに笑顔に変わる。

『そうですね、ネオ。彼は私のずっと尊敬する『王子』。姫君、みんなで作りますから、楽しみにしていてください。』

「わかったわ!」

お姫様の笑顔の返事を聞いて、リングはとても嬉しそうに笑った。

「リング、ありがとう。」

『はい、ネオ。』

私とリングは笑い合って手を繋いだ。



研究所を出て、たくさんのものを見て知った私。

未だにしっかり気をつけて出歩かなければ命の危険にさらされるけれど、この辺がドームになったら、私ももう少し気楽に出歩けるようになるだろうか?

きっとまだこの星には、私たちの行ったことがない場所がある。
そこに人間はいなくても、どんな生活を送っていたとしても、それはその人たちが今を一生懸命生きる姿なんだと思う。

私は会えるだろうか?
いつか会えるかもしれない、そんな人たちに。


前の時代がどんな『常識』だったとしてもいい。
今は、私とリングがアンドロイドのジペットさんの孫で、アンドロイドのお姫様と私が姉妹で、リングが私の大切な『恋人』で…

これから私が長くはない命を生きていく間、それが私の支えになるから。

出会ったみんなと私はともに生きていく。
みんなで住む場所をみんなで直しながら、困ったときは助け合いながら、この星で。

お父さんやお母さん、リングのご主人様がいつか目が覚めたら、私たちは胸を張って言えるかな…

私たちは生きているんだ、って。


《終わり》