人間たちの急を要する計画のため、突然やって来た私でもすぐに受け入れが決まりました。

「主人を失った自立式の旧式アンドロイドか。特に余計なプログラムはされていないようだ。急な協力者だが心強い。申し出どおり、旧人類の少女をより良く研究するために側使いとして使わせてもらう。だが、余計なことを話されては困る。」

私の言葉は研究所にいたアンドロイドたちによって失われました。
私もネオと共に二つの部屋にしかいられないよう閉じ込められて。

しかし私はネオと違い、部屋を出ても環境に影響される訳ではありません。
自身に言葉を戻し、ネオに人間らしくいてもらう環境を作るための時を待つことにしました。

中は最新の技術に囲まれた、人のいない鉄壁の城。
いるのは人間そっくりな姿をしていても、遥か遠くから送られてくる命令に従って管理されている最新型アンドロイド達だけ。
その者たちが検査のために入れ替わりでネオの部屋に来ていただけだったのです。

ネオの孤独など、研究に熱心な機械任せの人間達や、心の動きを見る事をインプットされていないアンドロイド達になど分かるはずはありません。

ネオは幼い時にはここに連れてこられ、両親の記憶も消されました。
都合の悪い記憶はしばらく眠る間に、消したり書き換えられたり。ネオは何一つ、両親のことを覚えていませんでした。
そして年端もいかないうちに、ネオを観察体としか見ていない者たちにばかり囲まれて過ごしてきたのです。

普通の人間としての幸せを知らないままのネオを、ご主人様の意思だけではなくどうしても私は救いたい。

それに、私はある日知ってしまったのです。栄養カプセルの他にネオが飲まされていたのが、体に害が及ばないかも分からない研究用のカプセルだったことを。

私の中の何かが訴えるようでした。
この機械だらけの体の中で、

「あなたを守りたい」

と。

だからこそネオの望む限り、ずっとそばにいたかったのです。

『彼女は僕の願い…』

そうご主人様はおっしゃいました。
私にはいま、ネオの願いは私の願い。

ネオは、 研究所という『城』に閉じ込められ、眠るだけの姫ではありませんでした。私の提案はあったけれど、自身で私と共に旅に出ることを決めました。

身勝手な人間たちはもういません。
しかし宇宙へ飛び立つすべも無い私たちは、共にこの星に閉じ込められた『籠の鳥』。
管理されたままの、未だ崩れることのないこの空。そして明かされないこの星の実状。

それでも私たちの生まれたこの星で、これからも私たちは『生きて』いくのです。

ご主人様に懸命に造って頂いた体ではありますが、私の体は機械で、見てくれも人間らしくありません。
私の『心』すらも、ご主人様の恩師を模した幻かもしれない。

それでもネオが望んでくれるのなら、私はあなたの支えになりましょう。あなたと共に迎える、いつかの『最期』がくるまで。

それは私の願いでもあります。
ネオは私と共に生きる、私にとってただ一人の大切な相手なのだから…

………