「ネオ、わたしとずっといっしょにいて!」

お姫様はそう言って私の手を強く握る。

ずっと…?
ここならきっと私は長く生きられる…でも…

「…お姫様、ここは私の居場所じゃないんです…だから…ごめんなさい、帰らないと…」

お姫様の顔が悲しそうにゆがむ。

「なんで!?ネオだって、ここにいたらスーツがなくても、くるしくならないのに…!!ねぇカイナ!カイナもネオにいってあげてよ!」

「…姫様……」

「…。」

一生懸命泣きそうなのをこらえているお姫様を見ていると、私まで泣いてしまいそうになってしまう。

「お姫様…向こうでは私の帰りを待っていてくれる人がいるんです…。仲良くなったジペットさんと、研究所に眠っている人たちに、帰ってきますって言ったから…。ジペットさんは、私とリングが大事だって言ってくれたから…だから……」

一生懸命に私はお姫様に続けて言った。

「それに、お城は私の場所じゃありません。私はお姫様じゃないし、リングは王子様じゃなくて、私とずっといてくれた、私の大切な相手なんです。でも私の夢だったお城に来られて、お姫様たちにとても親切にしてもらえて、私はとても嬉しかった。これからも、私とずっと仲良くしてくれますか…?」

「う……」

お姫様はもう泣きそうだった。
するとお姫様のそばにいる女の人はお姫様に言う。

「姫様、ネオ様はあなたの『お姉さん』のようなものですよ?あなたより先に生まれたのですから。自分のお姉さんの気持ちは特に、大切にして差し上げなければ。」

「「『おねえさん』??」」

私とお姫様は同時に女の人に聞き返した。

リングが笑顔で教えてくれた。

『お姉さん』というのは、家族の子供の何人かの中で、先に生まれた女の子のことを言うらしい。

『ネオが先で姫君が後であれば、ネオがお姉さんというのはおかしくないかもしれませんね。ネオ、姫君、お姉さんと妹は仲良くです。』

お姫様はうなづいて、涙を拭いて聞いた。

「…ネオ、わたしのおねえさんでいてくれる…?」

…そう、きっとお姫様が良いのなら、私も嬉しいから…

「はい…!嬉しいです、仲良くしてください、これからも…!」

私とお姫様は笑い合った。


『ネオは、姫ではなかったのですね。しかし、私の大切な相手には変わりありません。私はご主人様に誇れます。』

リングはポツリと言った。

…そうだ、私は帰りたい。けれどリングはどうだろう?
ご主人様がここにいるのなら、残りたいと言うだろうか?

私がそっとリングに聞こうとしたその時、リングは私にたずねた。

『私は帰ってご主人様の家を片付けて差し上げなければ。ご主人様がいつ目覚めても良いように。ネオ、私の願いは終わっていません。私と来ていただけますか?』