『これは』

「わぁ…!!」

私とリングは思わず声を上げた。

茶色の『土』と言われるものが地面に敷き詰められた『庭』。
そこにたくさん“立てられた”『木』。
濃い茶色のボコボコとした、縦に長く太い円柱のような形のもののてっぺんに、緑色の髪の毛のようなものが被さっている。

よく見ると、茶色の円柱の先は上に向かってたくさん枝分かれしている。緑の髪の毛に見えたのは、細かく小さな薄べったいものが、その枝分かれした先に数え切れないほど付いていたためだった。

そして形も大きさも様々で、色とりどりなお花たち。そして小さく細長い、緑色のツヤツヤした『草』。
草やお花は軽い布のようなものではなく、そっと触ると不思議な触り心地がした。

木と言われたものに付いている緑が何枚も、風に吹かれては舞い落ちて、花や草は風にのって揺れている。

私はそれらに思わず見入ってしまった。

リングは目を丸くしたままお姫様と女の人に尋ねる。

『植物は、この星ではもう絶滅したものだと。これがこの国にはあるのですか?』

「はい。とは言っても、本物ではありません。これらは研究者たちによって生み出されたもので、本物の数分の一ほどの光合成しか行われないのです。しかも持ち出すことはできません。この、人工で造られた天候が管理する、この国でしか育てることができないのです。」

『こうごうせい』は、なんだか分からないけれど、ここにしか無いのはなんだかとてももったいない気がした。

「…リング、私たちのところにもあったらいいのにね…お花も木も、とってもキレイ…それに……」

少しの風に吹かれて、木の緑やお花が立てるサラサラという音、落ち着く気分になる、たくさんの木が立てられた庭…

「…なんだか『なつかしい』、みたい…」

『ネオ』

リングは私を見てニコリと笑った。

『たくさん勉強をして、あの地にもたくさんの花や木を増やせるようにしましょう。そうしたらきっとジペットさんもご主人様も、みんな喜んでくださいます。』

「うん…!!」


その日、お城の人たちは私たちにたくさんの食事を振る舞ってくれた。

見たこともない見た目と香り、それに味。色々な固さや歯ごたえの食事。

でもなんだかこれも、懐かしい、みたいな気がした。

お姫様と一緒に食べている私の横で、リングは女の人と穏やかに話をしている。
リングと一緒に食べる事ができなかったのはなんだか寂しいと思った。


「美味しかったです…!えぇと…お食事、ありがとうございました!」

「よかった!ネオもリングもおきゃくさまだから、おかたづけはだいじょうぶだよ。ゆっくりすわって。あとね、これをみてほしいの…」

ソファーに移動すると、お姫様はおずおずと、何枚か積み重ねられた平たいものを持ってきた。

それはキャンバスに描かれた絵だった。

「わたしがかいたの…。ネオのもみてみたい…こうかんこ、しよう…?」


私とお姫様はその日、夜遅い時間まで絵の見せ合いっこをして、たくさん話をした。

私が研究所でしてきたことや、旅の間にあったことや会った相手の話をすると、お姫様は身を乗り出して楽しそうに聞いてくれた。

そしてあっという間に時間は過ぎていった。