女の人はまっすぐに私を見た。

「…姫様もなのです、ネオ様。姫様は、自分がネオ様を元にして造られたアンドロイドであることを知っています。しかし、ネオ様との違いをまだよく分かっていないのです。この国の者たちは二つの姿を選んで生きています。旧型アンドロイドの姿であっても、人間そっくりの姿であっても、違い無く生活をしています。」

…そうだったんだ…それなら私も、それでいいのかもしれない。私と周りに、無理に違いを探せなくたって…

「…リングも私と変わらないよね…?少し体が違うだけだよね?」

リングは少し黙ったあと、私に微笑んで言った。

『そうですね、アンドロイドである私も、人間であるネオも、それなら変わらないのかもしれません。ネオは私と一生懸命に進み、ともに生きてきたのですから』


「リング様、何か聞きたいことはお有りですか?私の知っていることならば何なりと。」

女の人は優しくリングに声を掛けた。

『あなたは記憶装置だったのですね。どうりで私が事前に得た情報よりも詳しいはずです。私はこの街のことは一切知らされなかったのです。それにしても、研究所の者たちは姫君を目覚めさせずに消えてしまったとは。』

リングがそう言うと、女の人は真剣な顔に戻る。

「実は…私はリング様のことも知っていました。研究所からの情報だけでなく、ある方に教えて頂いていたのです。」

『『風のうわさ』というものは恐ろしいものです。ネオを身勝手な人間たちに連れ戻されずに済んで本当に良かった。』

困ったように言うリングに、女の人は首を静かに振った。

「いいえ、噂ではありません。あなたをよく知っている方から聞いていたのです、リング様。そして、姫様を目覚めさせてくださったのもその方。その方は、この国自体を目覚めさせてくれた恩人なのです……」