…お姫様はアンドロイドだった。

私たちを連れてきた人がお姫様は人間だと言っていたけれど、私のことと勘違いしていたのかもしれない。
お姫様が私を元にして造られたから。

リングがお姫様が人間じゃないことに気付かなかったほどだったのは、私を元にしていたからなんだと思う。

ここはもう人間の長く生きられなくなった星で、私のいた研究所にいたのも、みんな人間じゃなく、操られたアンドロイドばかりだった。

声は人間の、この国から送られてくる声だったかもしれない。
でも、 私のいた研究所で所長や研究員、先生をしていたのはアンドロイドで、私自身は特殊で、比べるものがなかった私は…

…だから私にはリングと私の違いが分からないんだ…

それに、あの人たちが自分たちのために私を調べていたのは知っていた。
でも、そのために私が何かを忘れさせられているなんて…

『ネオ』

リングは私の気持ちを考えて声をかけてくれたらしい。
けれど私の方も言わずにいられなかった。

「…私、おかしくないよね…?ずっとアンドロイドばかりに囲まれていたんだとしても、リングは私を何もおかしくないって言ってくれたもの…」

リングはすぐにうなづいてくれた。

『はい、ネオはご主人様と同じ、純粋な人間です。体が周りと変わっていても、人間であることに何も違いなどありません。』

「良かった、ありがとう…!それに、リングは前に、思い出せないことは今はきっと思い出さないほうがいい、って言ってくれた。そのうち思い出す、って。何を忘れてしまったのか、私はいまだに思い出せない…。でも忘れてしまったことを無理に思い出さなくても、今はきっと…」

『そうです。そしてネオならばきっといつか思い出せますよ。そして、そのうちに分かるのかもしれませんね。』

リングは私の言葉に、そう言ってそっと微笑んだ。