「…リングが私のこと、嫌いになったんじゃなかったら、ずっといてほしいの…。アンドロイドでも関係なく、リングにいてほしい…お願い…」

リングは優しく笑う。

『お願いをしているのは私なのですよ?ネオは私の守るべき相手なのですから。』

守るべき相手…?
リングは一度も『そばにいたいから』とは言ってくれない。まるで私を守ることだけしか考えていないような言い方をする…

私は泣きそうになって、寝そべったベッドに顔を埋めた。

「…ありがとう、リング…。疲れちゃった、ね…。今日はたくさん、色々なことがあったから…寝るね…」

リングからはいつものように穏やかな曲が流れ始め、そっと私の手を取る。

『私の『意思』でもあります。ネオが眠るまで、手を握っていましょう。』

リングはいつものように優しく私の手を包む。

「うん、ありがとう…」

私はまだ眠れなかったけれど、リングに手を握ってもらったまま寝たふりをした。

少しして、リングは呟くような小さな声で言う。

『人間用の設備の整った部屋、人間の姿とアンドロイドらしい姿の、二つの姿のアンドロイドだらけの国、そしてあの女性と姫君。まだ分からないことだらけです。なんとか早く事実を確かめ、ネオが安心して生きていけるよう事を進めなくては。それが私の使命、そして、ご主人様の願い』

…前にもリングは言っていた…ご主人様の願い、約束、って。
…何を約束したの…?いつか、私に教えてくれるかな…

『ネオはなぜ、あんなに愛らしいことを私に言うのでしょうね。私は前に通ったゲートのおかげで、余計人間らしい感覚が芽生えてしまったというのに。なぜ私は周りとは違うアンドロイドなのでしょう?私が人間なら、許されることだったのかもしれない』

…リングと私の、何がそんなに違うのだろう?
リングは私と違って『造られた』だけ。確かに体の作りは違う。それは私が旧人類だからではないのだろうか?
私が知らない頃の世界はもっと、アンドロイドと人間は違うという考え方だったのだろうか?

私たちはまだ何もここのことを知らない。
ドームに入っている『街』とお城、それに私たちのいた場所と違い、嵐も起きる。他にも知りたいことはたくさんある。
明日、私たちはそれを知ることになるんだろうか…

私はようやくウトウトとしてきて、考え込んでいるのか黙ってしまったリングを見ることなく眠りに落ちていった。