しばらくすると、さっき私たちをお城に連れてきた人たちが、私たちを前に頭を下げ、床に膝を付けて謝ってくれた。

リングは、

『分かっていただければいいのです。顔を上げてください、そしてネオのことをしっかりと理解して頂きたい。ネオはあなた方と同じように、ただ懸命に生きているだけなのだと。』

そう言った。


私たちは部屋を用意してもらい、私は部屋にあった浄化装置で数日ぶりに体を流し、寝る支度をした。
やっぱりスーツに付いた簡易のものよりも、お湯と泡で流す浄化装置の方がさっぱりする。

部屋はリングのご主人様の部屋よりも大きく、壁もとてもきれいな色だった。
部屋にあるものはクローゼット、飾りの付いたきれいな窓、そして脱衣場の付いた浄化装置と、今まで見たことのない形のトイレだった。

ベッドは二つあるけれど、それは互いに見えないように間に仕切りがしてあった。

『変わったものはありませんでした。本当に今夜はゆっくり出来そうです。ネオ、髪は乾きましたか?髪は長くなりましたからしっかりと乾かしておきましょう。歯を磨いたらこちらに。疲れたでしょう?私は隣のベッドで体を休めます。ネオはこちらで寝ていて下さいね。』

「うん…」

外ではまだ、嵐は続いているらしく、頑丈なお城の中からでも、風と雨の音は聞こえ続けていた。

「…リング、少しの間だけでいい、手を握っていてほしいの…ダメ…?」

私は外の嵐を気にしながらリングにお願いする。

『ネオはあのお姫様のように甘えっ子ですね。』

リングは困ったように笑ったけれど、突然の言葉に、私はなんのことか分からなかった。

「…??私、リングとずっと一緒だったから…これがおかしいのかなんて知らないの…私はリングに甘えてはいけないの…?甘えるのは、いけないことなの…?」

リングはすぐに気づいたように真剣な顔になり、私のベッドのそばの椅子に座った。

『そうでしたね。あなたが成長をしたからといって、自覚もないのにそのようなことを言ってはいけないのかもしれません。』

リングの言葉に私は困ってしまい、なんと言ったらいいのかが分からなくなり言葉が出なくなってしまった。

リングはパチパチと瞬きをすると、優しく笑って言う。

『ああ、これはきっと私のわがままでもあるのです。ネオが拒むようになるまで、あなたのそばに私は寄り添ってあげたい。アンドロイドの私に、それを許していただけますか?』

リングの言った意味はわかったけれど、なぜ私がリングから離れようと考えるようになるのだろう?
私が大人になったら、そう思うようになってしまうのだろうか?
それに、ずっとそばにいてくれたのに、今は私にわざわざ聞くのはなぜだろう?アンドロイドが人間のそばにいてはいけないのだろうか…