「…私は…今はただの、姫様の育ての親の役割をする者です。何からお話をしましょう…姫様にすら打ち明けていない事実もあるのです。姫様はあのとおり、まだ幼いですから…」

女の人はそう言って、困った顔で私たちを見つめた。


お姫様が小さな二つ椅子を持って戻ってくると、リングは女の人の椅子を勧められ、お姫様と女の人が小さなその椅子に座った。

「わたしのイス、すわりごこちはどう?ネオ。」

緊張する私に、お姫様は心配そうに尋ねた。

「はい、イスを貸してくれてありがとうございます…こんなきれいなイス、私、初めて座ったので…」

私はお姫様の前なのと、飾り付きの椅子のきれいさと初めてのフワフワな座り心地に、緊張をして体が固まってしまっていた。

「ネオ様、このエリアはそのスーツが無くともお過ごし頂ける環境になっています。ご心配ならもう一度計測をしてから、くつろがれたらいかがでしょう?」


私は女の人の言葉に甘え、リングの計測結果を見てからスーツをゆるめる。

「長い旅路をよくいらっしゃいました、おふたりとも…!知らぬこととはいえ無礼を働いた者たちがいたことをどうかお許し下さい。ネオ様には、命の危険にまで合わせてしまったとか…。城の皆にはよく言って聞かせます。そしておわびにおふたりを大切な客人としてお迎えし、ゆっくりお過ごし頂きたいのです。今日は客間を用意させていただきます。どうかそこでゆっくりとおやすみ下さい。疑問はおありでしょうけれどお疲れのはず…」

お姫様は女の人の袖を引っ張り、おずおずと尋ねた。

「カイナ…ネオといっしょにねてはダメ…??」

女の人はお姫様に優しく言った。

「姫様、ネオ様はこちらに来られたばかりなのですから、緊張をして疲れが取れなくなってしまいます。もっと仲良くして頂いて、姫様からお願いをしてはどうでしょう?」

お姫様は何度もうなづいて、そして私に少し心配そうな顔で聞いた。

「…ネオ、わたしとあそんでくれる…?」

お姫様と私が遊んだりしてもいいんだろうか?
私はそう思ったけれど、私は仲のいい相手ができると思うと嬉しくなって、こう答えた。

「え…えっと…その、私で良かったら…」

お姫様の顔が笑顔に変わる。

『良かったですね、ネオ。』

リングはそう笑った。

「お疲れでしょう、今日のところはまず体を休めて頂いて、私からは明日、順を追ってお話をしたいと思います。」

女の人は立ち上がり頭を下げる。

『かしこまりました。では明日、落ち着いてからお話をうかがいたいと思います。』

「よろしくお願いします!」

頭を下げるリングに続いて、私も下げてそう言った。