「「!!」」

今度驚いたのはお姫様と女の人の方だった。
ふたりとも私を上から下まで見つめ、そして隣にいるリングを見る。

「え、と…はじめまして、別の大陸から来ました、人間のネオです。」

私はお姫様の姿を見てまだぼんやりしたまま、そう挨拶をした。

『先ほどは大変失礼いたしました。私は旧式アンドロイドのリングと申します。お初にお目にかかります、姫君。そしてカイナ様。』

私たちはそれぞれ挨拶をして頭を下げる。

「ほんとうに!?ほんとうに、ほかのところからきたの…!?」

お姫様はそう言って、私たちの所に走り寄る。

「あ、姫様…!」

女の人の止めるのも聞かず、お姫様はすぐに私の手を取る。

「え!?」

「『にんげん』なのね…!?『ネオ』なのね…!?いたわ…!やっぱりちゃんといたの!!『わたし』は、いきてた…!!」

「…『わたし』…??」

私は何がなんだか分からないまま、小さなお姫様に抱きしめられていた。
私の小さな頃にそっくりなお姫様はとても嬉しそうに笑い、涙まで浮かべている。

「…私の記憶のネオ様が成長した姿です、間違いなく…。そしてあなたが……」

女の人もそう言って私を見つめ、そしてリングを見る。

『どういうことなのでしょう、思考の処理が』

リングも困った顔のまま、私やお姫様を見ていた。

「ネオはわたしなの…もういなくなってしまったかもしれないっていわれて、わたし、ないちゃった…」

お姫様はそういうと、手を引いて私を目の前の大きな椅子に座らせてくれた。

「すわっておはなししよ?どうぞ…!」

「は、はい…」

私は何がなんだかわからないままお姫様の大きくて立派な椅子に座り、目の前のリングと顔を見合わせた。

「おうじさまにも、イスをもってきてあげます…!おきゃくさまにはイスをすすめるものでしょ?」

お姫様はそう言うと、嬉しそうに走って奥へ行ってしまった。

「…王子様!?」

『大変失礼ですが、こちらには王子様もいらっしゃるのでしょうか?』

リングも驚いた顔でそばにいた女の人に尋ねる。

「…いいえ。姫様のおっしゃる『王子様』と言うのは…ネオ様の隣におられます、リング様、あなたのことです。」

困ったように笑っていたその人は、私たちに優しく笑いかける。

リングが私の王子様…?

「ネオ様とともにいるリング様を、姫様は王子だと信じているのです。『人間の姫』を救った王子だと…」

「『人間』の…??」

『私が、『王子』。あなたは一体何者なのでしょう?ネオが姫と呼ばれていることはいいとして、私がネオを連れ出したことを、なぜご存じなのですか?失礼ながらおたずねしますが、あなたは研究所の者たちとは違うのですね?』

リングは女の人をじっと見つめてそう聞く。

リングは疑っていたのかもしれない。
どこへ行ったのかがいまだに分からない研究所の人たち。
もしこの人が研究所の人の知り合いだったら、抜け出した私たちは連れ戻されてしまうかもしれないから…