しばらくするとリングは、奥の部屋で待っていた私のところに帰ってきた。リングはなんと言うか、『無機質で無表情』だった。

私はすぐに、何かあったんだと思った。
でもリングは私を見ると、いつも通り笑って首を振る。

「…誰も、いなかったの…?」

リングはうなづいた。

「私、出ても平気そう…?」

リングは首をかしげる。

「…私、部屋の外に出られるかわかんないんだ…。隣の部屋で絵は描ける、お水は飲めるけど、もう私のお食事のカプセルは……」

私がそうつぶやくと、リングは何かの箱を取り出した。
箱に何か書いてあったので読んでみると、『ネオ』とあった。
リングは箱を開けてくれた。

さっきリングが一つくれた、お腹が満たされるカプセル。それが数え切れないほど入っていた。

「見つけてきてくれたの!?ありがとう…!!早く、誰か帰ってくるといいね?」

リングの表情が悲しそうに歪んだ気がした。

私はこの部屋と、絵を描く隣の部屋以外に出ることはできない。
でもきっと何かあったんだと思う。もしかしたらリングは、私に見てほしくないものを見つけたのかもしれない。

「…どこに、行っちゃったんだろうね、みんな…?」

リングは私を心配して、言わないでいてくれているのかもしれない。
私は知らないふりをしてそう言った。


夜になったはずの時間。時計は十九時を示していた。

一日中、リングと遊び、絵を描き、部屋で運動をしたけれど、とうとう誰も部屋に来ることはなかった。

「…どうしたんだろう……?」


寝る支度を始める頃になっても誰も来なくて、なんだか落ち着かない。

リングは『もう寝てしまいなさい』というようにベッドをポンポンとたたき、私をそばに呼んだ。

「…そうだよね…明日になったら、誰か来てくれるかも…。」

リングは笑ってうなづいた。

「おやすみなさい、リング…」

心配で眠れるわけが無かった。
それでもリングが、私を心配させないようにしてくれている気がしたから、なんとか眠ろうとした。

「……。」

小さな音できれいな音楽が流れる。
リングが夜によく流してくれる、よく眠れる曲。
頭を撫でてくれる手は、昔してくれた誰かとは違う感じな気もするけど、とても心地が良かった。