私たちは乗ってきたという乗り物に乗り、お姫様のところに行けることになった。


建物の外は、私が見たことのないような異常なものに見えた。

空から大量の水が落ち、私たちのいる乗り物に叩きつける。
見上げた空には灰色の雲が覆い、その間をピカピカと光が走ったかと思うと、ゴロゴロゴロという、お腹に響くほどの音が鳴り響いた。
時々、ビシャーン!!という激しい音。少しの間を置いてそれが何度も繰り返されている。

「きゃああっ!!」

私にとっては変わった建物ばかりだったのでゆっくり見ていたかったけれど、怖くて震えてしまう。

『ネオ、これが嵐ですよ。私たちは晴れた空しか見たことがありませんでしたから、ネオには刺激が強すぎましたね。早く止むと良いのですが。』

リングの膝にすがりついたままの私の頭を、リングは縛られたままの両腕で優しく包んでくれた。

『しかし、何のためでしょう?ドームの中だけに嵐を作る理由など、あるのでしょうか?アンドロイドしかいないと言われている、このドームに』

そうリングは小さな声でつぶやいた。


『ネオ、見てください。お城ですよ!』

リングにすがりついていた私は、リングの声でハッと顔を上げた。

あの大きな白い壁、とがった屋根の付いた高い『塔』…

私は嵐に怯えていたのも忘れて見入る。

「…私が…昔どこかで聞いたお城に『そっくり』……」


………

『ネオ、お城はね、王様や女王様、王子様やお姫様が、家族やお手伝いの人たちと仲良く住むところなのよ。白い壁でね、高い『塔』がついていて、きれいな飾り付きの大きな窓もあるわ。『お庭』というのがあって、そこにはたくさんの『お花』、っていう、たくさんの色の植物が植えてあってね……ふふっ、まだネオには難しかったかしら。まだネオは小さいんだもの。』

『ネオはお城に住んでみたいかい?…そうか、まずは見てみたいか。いつか、三人で見に行こうな、ネオ…』

………

誰が話してくれたかも忘れてしまったお城の王子様とお姫様のお話。

まるで私の何度も聞いたお話から飛び出してきたみたいに……

「…あのお城にお姫様がいるんだ…!」

私は早る気持ちをおさえ、リングに寄り添った。


「姫様のもとへ!」

中に案内されると、たくさんの変わった服の人たちが『お城』の中を歩き回っている。

動くとカシャカシャと鳴るピカピカ輝くものを全身に付けている人(鎧)や、軽そうな服に白いヒラヒラの付いた前掛けをする人…
リングに近いアンドロイドの姿もちらほら見える。

けれど今まで会った、研究所にいた人たちやジペットさん他アンドロイド、置かれていた機械や家、私のスーツやリングの服よりも、私の使う絵の具のような色鮮やかな物ばかり。
よく考えて見てみると、私たちを連れてきてくれた人たちも色鮮やかな服を着ている。

みんな私たちを見て立ち止まる。

「…妙な姿の子ね…」

「…あちらは本物の旧式だ…!」