………

『ネオ!!』

私は周りを怒りの表情で睨みつけながら早口で言った。

『今すぐに彼女のメットを戻すのです、早く!!旧式アンドロイドの非常時の力を知っているでしょう!?事を荒立てたくはありません、さあ!』

ぼう然としていた彼らの一人がようやく慌ててネオのメットを締め直す。
私はネオの肩に取り付けていた非常用のスイッチを肘で押すと、ネオの体は膜で包まれた。

『あなた方はずいぶん、人間らしく造られたアンドロイドのようですね。この非常時にうろたえるばかりとは。彼女のこの装備は、『旧人類』と言われた彼女の『命』に関わるものです。私はこの通り、ある人間をもとに、『彼女を守るため』造られた旧式アンドロイドになります。これ以上の彼女への手出しは無用でしょう。』

「…。」

彼らは何もせず、膜に包まれて眠るネオを見つめていた。

黙っていた彼らは、ネオが穏やかな表情に変わっていくのを確認すると私に問いかける。

「…お前のような純正な旧式は初めて見たぞ…。それにこの子供は…」

『人間です。私たちのいた場所では唯一と言われる、たった一人の人間。それが彼女です。』

私ははっきりと答える。

「…あれは過去の話のはずだ…!!姫様は、もうこの世界には人間は『自分』しかいない、と…!」

『あなた方は確か、他の大陸も昔の話だと言っていましたね。ですから私たちは真意を知るためにここへ来たのです。彼女とともにこのドームの管理者である姫君のもとへ連れて行っていただきたい。ぜひお話を伺いたいのです。』

「…どちらにせよ、姫様のもとに行ってもらうことになる。まだお前たちが何者かは分かっていない。無駄な抵抗をすればそこの子供も処罰だ。」

私はただ、ネオを守れさえできれば…

『抵抗などしません。あなた方がネオに何も害を加えないと約束して下さるのなら。』

ようやく落ち着いたネオを、体の前で縛られた私の腕に乗せて包むように抱えると、彼らについてドームの中に入った。


中は嵐だった。
私ですら知識でしか知らない、天候が管理される前のような強い嵐。

細長い建物が比較的高く並んでそびえ、小さな数人乗りの乗り物も、三角の屋根の小さな建物も、あちこちに見られる。
嵐のためか住人の姿は見えなかったが、それはまるではるか昔の街の姿のよう。

「乗れ。」

私たちは十名ほど乗れそうな乗り物に乗り、町外れの屋敷に連れて行かれたのだった。

………


どれくらいが経ったのか分からないけれど、目を覚ました私のそばに、悲しそうな顔をしたリングがいた。

気付けばリングと一緒に、手を縛られたままベッドだけが置いてある部屋にふたりきり。
外れていたメットも直され、もう苦しさもない。
私の頭はベッドに座ったリングの膝に乗せられ、体はベッドに横たえていたらしかった。

『ネオ!気がついたのですね!あなたに何かあったら、私のいる価値などありません。何も出来ずあなたを苦しめてしまい、本当に許して下さい』

リングは泣きそうなくらいの表情で私に謝った。