「出てきたぞ!」

私たちが乗り物を出ると、その人たちは持っていたものを構えた。

『お願いです、待って下さい。私たちは別の大陸から来た者です。荒れたこの世界を救う手助けをしてくださる方を探し、はるばる』

リングは一生懸命に説明しようとしたけれど、その人たちは聞いてくれようとはしない。

「別の大陸だと!?そんな昔話を信じる者がいるものか!!」

「昔話…!?」

…別の場所にはもう、誰もいないと思われているの…?

ジリジリとその人たちは私たちを、乗ってきた乗り物際に追い詰めた。

「姫様のもとに連れて行くぞ!!」

あっという間に私たちの周りを取り囲まれた。

「こいつと、そっちの妙な奴を連れてこい!!」

妙と言われたのはスーツとメットを付けた私の方だった。

『彼女は人間です!!』

リングは怯える私を背にしたまま、いつもはあまり出さない感情のこもった声を張り上げる。
でもその人たちはきっぱりと言い放った。

「人間は姫様、ただお一人だ!」

「ほかに人間などいるものか!!」

…この人たちは人間じゃないんだ…
そしてこの地域には、ただ一人の人間のお姫様がいる…

「っ…お願いです…!!そのお姫様に会わせてください…!!」

言ったのはリングでも他でもなく私。
人間のお姫様に会ってみたい、直にお願いしたい一心で、いつの間にか大きな声が出ていた。

「…この声、聞き覚えが…?」

私の声を聞いてなぜかうろたえ始めるその人たち。

『どうしたのでしょう?』

「わからない…。リング、ごめんなさい…大人しくしていなくちゃいけなかったのに…」

『いいえ、ネオ。これはチャンスです。この世界のことが詳しく聞けるかもしれません。』


その人たちはうろたえた様子のまま、私たちの両方の手首を、背中の方で紐で一つに縛り始めた。

「武器は持っていないだろうな!?全装備を出せ!荷物は預かる!」

『装備はありません。私は旧式です。私を見ても驚かないということは、同じ型を見たことがあるのでしょう?スキャンをして調べていただいてもかまいません。』

リングがそんなやり取りをしている最中、一人がリングのそばにいた私の肩に手を掛けた。

「お前もだ!ほら!!」

「嫌っ…!!」

私の体に触れようとする手を、私は手を縛られているため、急いで体をひねって強く振り解いた。

私の着ているスーツとメットはリングの大切なもので、私の命綱…

『彼女に触らないで!!』

リングが叫んだその直後、その人の手が触れて私のメットの装備は外れ、顔が出てしまった。

「!!」

…苦しい…息ができない…

手を縛られ、自分ではメットを戻すことが出来ず、私の意識は遠ざかる。

『ネオ!!』

「…まさか…!!」

「すぐ戻せ!!」

そんな声が聞こえ、私の意識は途切れた。