『なぁにネオ、ジペットじいちゃんがこの子達を直してやろうな。見ておいで!』

「っ…うん!!」

私はジペットさんの気持ちがとても嬉しかった。


『それにしても、雨が降らないのが救いだよ。もっと錆びついていたら、直すのはもっと手間だったはずさ。』

『ジペットさんは雨が降っている時代をご存じなんですね。』

ふたりの話を聞いていた私は、『あめ』というものが何か分からずに首をかしげる。

『ネオ、雨というのは、空から水が降る天気のことなのです。今はまだ、天候を管理するシステムが快晴で作動しているようなので助かっていますが。』

リングの言った言葉が、また私には分からなかった。
『てんこう』を管理するというのは何だろう?
それに、晴れだとなぜ助かるのだろう?空から水が降ったら困るのだろうか?私もその水が飲めるなら、降ったほうがいいと思うのに…

『草木も無いんだ。雨が降ったところで砂漠しかないのでは、水が蓄えられずに地面が崩れていってしまう。私たちも雨が続けば錆びついてしまうかもしれないからの。』

ジペットさんがそう言った。
草木…きっと私が見たことのない、昔に聞いたお話にあった、たくさんのお花や森のことだ。

砂ばかりのこの世界にはそれが無い。
きっとここでは、私以外には『あめ』は良くないものなんだ。リングだって、水を飲んだりしないから。

私は空を見上げてみた。
水なんて落ちてきそうにない、青い空。白い雲。
そして、私はスーツだけれど、リングの薄い服をなびかせる風。

私の知らない、水が降ってくる空は、一体どんな空なんだろう?


『さあ、ネオもリングも、疲れただろう?うちにお入り!まだ動かないが、ネオのためにお人形も増やしたんだよ!』

ジペットさんはニッコリ笑う。

「本当!?ありがとうございます!!」


リングに続いて私も真似をして、ジペットさんの家に入る。
初めて来たときはジペットさんは眠っていたから、誰かがいる家に戻ってくるのは初めてだった。


部屋に通されると、リングはジペットさんに言った。

『ジペットさん、しばらくソファをお借りしてもよろしいですか?ネオを寝かせてあげたいのです。』

『いいとも!帰ってきたふたりがいつでも座れるよう、掃除をしておいたんだ。それから人間用の浄化設備も手入れをしておいた。リング、ネオが入れるか環境を見ておくれ。』

「ありがとうございます!」

『ありがとうございますジペットさん。ネオ、待っていて下さいね。』

リングは機械をかざしながら部屋中を回り、私がスーツを脱いでも大丈夫な状態になったかを確認してくれた。

ジペットさんはソファーの周りを片付けて私が眠りやすいようにしてくれた。

私はふたりにお礼を言うと、準備してくれた浄化設備で身支度を整えたあと、カプセルを飲んでからソファーに体を横たえた。