大きな建物。
でもきっと私が前に教えてもらった『お城』とは違う気がする。
たくさんの人が入れそうな、広い何もない場所に、私たちは連れてこられた。

私たちは乗り物を降りる。
でもその人たちは何も言わない。
リングはその人たちの前の方を見て突然言った。

『申し訳ありません、彼女は人間なのです。彼女に聞こえるよう取り計らってはいただけないでしょうか?』

そうか、みんな通信でやり取りをしていたから、私には分からなかったんだ…

するとすぐ、その建物いっぱいに声が響いた。

『その小さな娘が人間というのは本当のようだ。今しがた、ゲートの管理知能からの分析結果が届いた。』

「??…だれ、ですか…??」

声は一緒に来た人たちでは無いようだった。私は周りを見渡した。

『私はこのエリアを管理するものだ。姿は無い。ようこそ。』

…姿はないということはアンドロイドではないということ…ゲートの知能さんと同じかな…?
それで研究所の所長みたいに一番えらい人なのかな…??

「…えぇと……私の名前はネオです…。」

私は何を言われているか分からず混乱した。

『管理者さま、少々お時間をよろしいでしょうか?』

リングは姿の無いその人に断ってから、混乱する私に説明をしてくれた。

『ネオ、彼はここのエリアを取り仕切る、王様のようなものです。これなら分かるでしょうか?人間と対話が出来るところを見ると、彼は人間の相手をするために元々は作られた、姿の無い人工知能のようです。』

「えっと…姿の無い、ここのエリアの王様なのね??…それなら分かる!ありがとう、リング!」

私なりに分かったので、私は姿の無い王様に改めてあいさつをした。

「失礼しました。私は人間のネオといいます。この、友達のアンドロイドのリングと、誰も居なくなった研究所を出て、私たちを助けてくれる人を探す旅に出ました。壊れた建物や、溶ける水に入っていく機械の人たち、アンドロイドの人形師さんを今まで見てきました。どうか私たちを助けてください…!!」

『人間の姫は何も知らないと聞いていたが、人間流の挨拶は出来るのか。ナイトを従えているとも聞いていたが、彼は『友達』か。』

「ナイト…??えっと…私はお姫さまじゃなくて……」

王様、私を姫、って…。なぜ私を姫と呼ぶんだろう?
それに、って『ナイトをしたがえる』って……??

『ネオ、ナイトとは姫を守る騎士のことです。私のことを指しているようですね。』

「じゃあなんで私がお姫さまなんだろう?」

リングとそんなことを話していると、王様の声が言った。

『行動の管理分析を開始する。その上でお前たちへの処遇を決める。』

「え…?」

『ネオ、私たちに、どのような対応を取るかを考えて下さるそうです。管理者様、彼女にこの気候は悪影響を与えかねません。それに少々乗り物で彼女を休ませたいのです。よろしいですか?』

『よろしい。』