壁を抜けて少し行くと突然、人間らしい人たちが私たちを取り囲んだ。
私のようなスーツではなくて、一枚着のようなシンプルな服を着ている。

研究所を出て初めての、私と同じ姿の人たちとの出会い。
私たちは乗り物をすぐに降りる。
でも喜んだのもつかの間、その人たちは冷たい声で私たちに言った。

「待て。お前達は先程通達があった、『下級』の方から来た者たちか。そちらのお前は、おかしなものは付けているが精巧な造りのようだ。」

『せいこう』と言われたのは私の方。その人たちは私のことを指差してそう言った。
おかしなもの、というのは、きっと私が着ているスーツやメットのこと。
でも私には『せいこう』の意味がわからない。

『いいえ、彼女は純粋な人間で、私は見ての通りの旧式です。私たちは、廃れゆく向こうのエリアから、救助を求めてこちらに来たのです。』

リングは私を守るように私の前に立って、その人たちにそう言った。

「人間がいるわけがないだろう。もう下級にいた人間たちは…」

『おやめください!!』

一瞬、誰が言ったのかと思った。でもそれは、聞き慣れたリングの声。
こんなに強い口調を聞くのは初めてだった。

…今この人たち、人間がいるわけ無いって…

『お願いです、ネオの、彼女の前ではどうか。本当に彼女は人間なのです。そのためにゲートが開かれたのです、彼女のために。分かるでしょう?彼女は何も知りません。そのために私がそばにいるのです。』

リングは悲しそうな顔でそう言った。

「…まさかお前が?この娘が、か?」

どういう事なのか私には全く分からない。
でも、リングの言葉を聞いたその人たちは驚いたようだった。

『はい、その通りです。まだ知るには早いのです。自覚が無いのですから。』

「リング……」

私は不安になり、リングに引っ付くようにして背中に隠れた。

『ネオ、大丈夫ですよ。私がなんとしてもあなたを守ります。彼らはネオを、人間そっくりに造られたアンドロイドだと勘違いしたのです。人間はここでも珍しいのでしょう。管理された者しか来られないのですから、アンドロイドや人工知能の方が多いのだと思います。』

リングは優しく私にそう言ってから、その人たちに向き直った。

『ここのエリアを管理しているのはどなたですか?その方にぜひお会いして、私たちの居た管理されていない地域の救助を検討して頂くよう願いたいのです。』

「…こちらだ。」

その人たちは私たちを乗り物に乗るように言うと、自分たちの乗ってきたものに乗ってどこかへ私たちを案内してくれた。