周りでたくさんの人達がいて、話している声がして気がついた。

きっとこのまま私は記憶を消されちゃう…その前に、先生に教えてもらったものを、見たり誰かに教えてもらったりしたい…

(そうだ…私が落ち着いたらきっと……)

起きていることがわからないよう、少し横を向いて深呼吸。普通に呼吸して、また深呼吸。

「…落ち着いてきたようですよ…?」

「なんだったんだ…貴重な生きた資料だ、慎重に扱わなければ……」

私は…資料……

気になっても、心を落ち着けて寝たふり…。
そうして、なんとかやり過ごした私はベッドへ移動させられ、その後はいつも通りに扱われた。



次の日、大きな変化があった。

「ネオ、“彼”はアンドロイドです。あなたのお世話係になりました。いつでもそばにいてくれますよ。」

「…!」

先生が連れてきたのは、銀色の肌に中性的で穏やかな顔立ち。目はまるで色付きの球体(ビー玉)。ここの人たちの堅苦しい白の服とは違って、色の付いた柔らかい素材の服を着ている、人間じゃない人…

「“彼”はかなり旧式になるのですが、命令は聞きますよ。」

“彼”は挨拶に頭を下げた。

「あ、アンドロイドさん…話はできないんですか?」

「…残念ながらできないのですよ。しかし、理解はしてくれるはずです。」

「…よろしくね…?私は、ネオです…。」

私の言葉に、彼はまた頭を下げた。

(私、ずっと見張られるんだ…)

なんだか悲しくなり下を向いていると、彼は優しく笑って私の頭をなでてくれた。

「あ…」
(悲しそうにしてたから…?気づいてくれたの??)

「自分は怖くないというアピールでしょうか?仲良くしてくれるみたいですよ?良かったですね、ネオ。」

先生は私の様子に気づいていないみたいだった。

「はい…!」

私は少し嬉しくなった。


「あなたも寝るの…?」

寝る頃になり、私が彼に声をかけると、私が寝そべるベッドのそばに来てくれた。そして、彼からは小さめな音でゆったりとした音楽が鳴り始めた。
こんなきれいな音楽を聞くのは初めてだった。

「え!?…あなたが流しているの!?」

私がたずねると彼はうなづいた。

「すごい…!それに、とてもきれいね…ありがとう…」

彼は私に笑いかけてくれた。