『私は彼女の保護者であり友人です。なんとしても彼女を救わなくてはなりません。それが私の作られた意味。』

その時、リングの目の前の壁に強い光が走った。
そして私は、次にリングが言った言葉を聞いて耳を疑った。

『分かりました、本当ですね?そこまでおっしゃるのなら。ただ、私が守るこの姫を、傷付けることは許しませんよ』

「え…!?」

いつもと同じ話し方。それでも私には、リングの強い感情が伝わってきた気がした。

でも分からない。
リングのそばにいるのは、もちろんいま私しかいない。なのにリングは言った。

自分が守る『姫』、って…

リングは私をいきなり抱き上げた。

「リング…!?」

『ネオ、少しだけ。ほんの少しだけ我慢を』

驚く私にそう言うと、リングは私を抱きかかえたまま壁に向かって走り出した。

壁に光は走ったまま。

私の全身にはビリビリとした感覚が走る。

「きゃああっっ!!」

『!!』

そこまで痛い訳ではないけれど、初めての感覚にとても驚いた私は、自分でも驚くほど大きな声を上げた。

『ネオ』

リングは壁を抜けてすぐに、私を抱えたまま立ち止まった。

『無事ですか?あなたにもしものことがあっては』

私はまだ少しだけ体がしびれたようになっていたけれど、指も手もなんとか動くようだった。

「っ……うん…大丈夫、みたい……」

私がそう言うと、リングは少し安心したように笑って、持っていたカバンを置き、私をその上にそっと座らせてくれた。

『わかったでしょう?彼女は生身の人間なのです。そのセンサーの分析と、彼女の痛みが何よりの証拠です。この気候は彼女の体は蝕みます。一刻を争うのです。通っても構いませんね?』

リングはまた見えない誰かにそう言うと、壁に引き返した。

何もないように壁を越えるリング。壁ももう、光を発してはいなかった。

リングは乗り物に乗ったまま壁をすり抜けて私のもとまで来ると、そっとまた私を抱き上げてくれた。

『ネオ、どこも痛くはありませんか?』

「私はもう平気…。リングは平気だったの?大丈夫?」

リングは私を乗り物に乗せ、黙った。それからすぐに言った。

『私の体は大丈夫です。ネオには怖い思いをさせてしまいました。申し訳ありません。』

一瞬黙ったリング。何か感じたのかもしれない。

今まで研究所では聞きたいことも言わずに済ませていた私。
でもいま、リングに何かあったら私はきっと耐えられない。もう内緒にすることはして欲しくなかった。

「リング、何かあったのね…!?お願い、教えて…!リングに何かあってからじゃ遅いの…!」

リングの顔は驚いた顔になったけれど、すぐに困った顔に変わった。

『すみませんネオ、そうですね。一瞬、私の記憶の前身であった人間の感覚が呼び起こされたのです。』

「え??」