私とリングは今日も、何も無い白い砂ばかりの世界を進んだ。


「あれ?リング、あれはなんだろう??」

私たちの行く手にある、透明だけど、うっすら見える壁のようなもの。
今まで見たことがないということは、だいぶ遠くまで来たのかな…

「…リング?」

リングは何も言わない。
乗り物はスピードを少し落とした。

リングが何も言わない時は、一生懸命何かを考えているときな気がする。


『ネオ、一度降りましょう。』

壁の前で乗り物を停め、少ししてリングが言う。

不思議な壁……

でもリングはその壁のすぐ前で、私を連れて立ち止まる。

『まずは私が。ネオ、私のすぐ後ろを来てください。』

リングの表情は真剣。

「うん…!!」

私はリングが、これが何なのか知っているのかもしれないと思った。

リングはゆっくりと壁に向かう。
そうして透明な壁にリングが触れた瞬間、リングは一歩下がって突然話し出し始めた。

『待ってください。私は大切な、ある目的でここを通りたいのです。』

「??リング…?」

私に向かってじゃない。誰か見えない相手に話をしているみたいだった。

『確かに私はこの通り、通信機能も付けられないほどの旧式になります。しかし、私と私の連れを、どうしても入れて頂きたいのです。』

「…入れる…??」

入れる、って…ここは入口なの??

リングと見えない誰かの話はまだ続いているようらしい。

『連れの彼女は人間です。いいえ、嘘ではありません。詳しいことを言うわけにはいかないのです。『生きる意志』を無くしてしまうかもしれないのなら。』

何の話をしているんだろう??私のこと…?

『まだ明かす時ではありません。お願いします。何も言わず、通しては頂けませんか?私は知っています。この張り巡らされたゲートには、特殊なセンサーが付いていると。通ろうとした者の構造を分析し、住み分けをさせるために。純粋な人間にも害がないとは言い切れません。どうか彼女の為にも開放して頂きたいのです。』

特殊な…?だからリングは私を後ろに…

『なぜこのように世界を分けなければならないのです?管理をして、従う者だけが救われる世界などあっていいのですか?いまはもう、皆で手を取り合わなければ』

リングの顔はずっと、崩れることなく真剣そのもの。
それなのに私には、何の話をしているのか何一つ分からなかった。