私たちはその後も、時々見つけた廃墟を調べ、また乗り物に乗って、たまに歩いて……

私の食事カプセルは一日一回か二回だけ。
それでも少しずつ少なくなり、もう半分近くは無くなってしまっていた。

何も見つからない。

続くのは、砂ばかりの地、廃墟、広い海……

リングは無表情で黙っていることが多くなった。

「リング、疲れているんじゃない…?」

私はたまにそう聞いた。
でもリングは私を見て優しく笑って、

『いいえネオ、アンドロイドは疲れないのですよ。バッテリーの充電も大丈夫です。』

そう言うだけだった。


『今日はご主人様の家で休ませていただきましょうか。』

私たちはまた『ごしゅじんさま』の家に戻り、休ませてもらうことにした。

ふたりで家の前で『ごしゅじんさま』に挨拶する。

『ご主人様、ただいま戻りました。』

「ごしゅじんさまさん、ただいま戻りました!」

リングの真似をして言う。
私が、ただいま、という言葉を使ったのは初めてだった。


『ネオ、明日はもっと遠出をしようと思います。』

「わかった!しっかり寝ておくね!ごしゅじんさまさん、またお借りします…」

リングは、借りたベッドに横になった私の頭を、優しく撫でてくれながら、いつものように穏やかな曲を流してくれた。


しばらく私は眠ったらしく、どれくらい時間が経ったのかふと気づくと、リングは部屋の隅に椅子に掛けて何かを見ていた。

あれは…二人の人間が写っていた小さなパネルがある場所…

『やっと救い出せたというのに、気付けばこの世界はこんなに。もう遅かったのでしょうか?私の回路…『心』は乱れ、人間のこのような真似事をしてご主人様に報告をする有り様です。』

パネルに向かって言っているみたい…

『なんとしても最後まで助けになりたいと思います。ご主人様はおっしゃいました。私が『騎士』の代わりになってくれたら、と。』

よくわからないけどリングは『ごしゅじんさま』と、他に何かを約束していたの…?

『必ず最後まで助けます。何としても約束を守ります、あなた様との、ご主人様との約束の為にも。』

私はなんとかリングの言葉を頭に残そうとしたけれど、疲れのせいでぼんやりしてうまくいかない。

『それでは、私も休みます。ご主人様、明日はまたここを離れます。またいつか、ここに戻る日が来ることを』


夢だったのか本当にあったことだったのか、まどろみの中でそれを聞いて、何もできないほど疲れていた私は、そのまままた意識が遠ざかった。



『ネオ、いずれ海を越えていくことになります。このあたりはもう、調べ尽くしてしまいましたので。』

「海を?海を越えることもできるの??海を越えると何かがあるかな??」

この世界はまだ広いんだろうか…?
私が全然知らない、この海の先は…

『まだ大陸が残っているはずなのです。この世界は少しの間に急激な変化を起こしています。この前のように、海に沈んだ国もあれだけではありません。私が外に出ていない少しの間に、変化が起きていてもおかしくありません。』

そうだ、リングは私と一緒に閉じ込められてしまっていたから…

『海底にも何か文化が発展しているかもしれませんが、私たちの身体や乗り物は、海中には適しません。海の中を調べる手立てが無いのです。なのでまずは大陸を目指しましょう。そのための手立てを探さなければ。』