私が起きると、頭の中がまだもやもやしていることに気付いた。

…寝る前に私、リングに大切な何かを聞いたような……

『おはようございます、ネオ。よほど疲れていたのでしょう。もう『昼』が近いですよ。それから、昨晩の話ですが』

「…リング…私、寝るちょっと前にあなたに何を聞いたんだっけ…?何か大切なことを、聞いた気がするの…」

私はまだ混乱しながらリングにそう聞いた。

『ネオ』

リングはそれを聞いて一瞬悲しそうな顔をした。

「え…?…ごめんなさいリング、私…!!」

私は一体何を聞いたのだろう?
リングを悲しませるようなことを聞いたのだろうか?

なぜか、何も思い出せない……

リングはそっと私に笑いかけた。

『いいえ、忘れてしまったのなら、今はきっと思い出さないほうがいいのです。大切なことならば、そのうちもう少し思い出しますよ。』

「リング…本当にごめんなさい……」

『ネオ、謝ることはありません。あなたの意志で忘れようとしたのではないのですから。』

そう。自分から忘れたいなんて思っていない。
でも、今の言葉、私の意志じゃなく忘れてしまったことがある、みたいな言い方…


『ネオ。私はバッテリーが劣化したとき用に換えを探しておきました。これならまたしばらくは保ちます。しかし、協力者が見つかった訳ではありません。引き続き協力者を見つける旅に出ようと思っています。もちろんしばらくはここを拠点に、ということになります。ネオはここで待つこともできますよ。』

「え……」

きっとここなら私に合う気候だし、安全。
でも、リングと離れる…?

「っ…嫌っ…!一人で待っているのは嫌!リングといたいの!」

リングと離れると思っただけで、なんと言えばいいのか、とても悲しくなった。
感情を抑えなければならなかった部屋にいた頃には、こんなに何かを強く思うことも無かったのに…

『ネオ。そうですね。共に行くと約束したのです。針千本も拳で叩くのも、ネオにさせる訳にはいきません。』

リングは、泣いている私の手をそっととった。

『置いていったりしません。もう泣かないで下さいね。』

「っ…うん…!」

『それでは私は支度を済ませましょう。スーツもメットもメンテナンスは終わっています。外にも行かなければいけません。なのでネオは中で待っていてくださいね。』