「…リング、寂しい…?」

私はただ、そう言った
理由はなんとなく聞けなかった。
上を見つめたリングがとても悲しそうに見えたから…

『ご主人様がいないと、ということですか?人間だときっとそうですね。しかし今は、ネオが私を共にいさせてくれています。きっと寂しくはないのでしょう。』

「人間だと??私は、リングがいてくれるから寂しくないわ。リングはそうじゃないの?」

リングは、あぁ、と言った。

『ネオには話していませんでしたね。私の中には、ある方の意志が受け継がれています。ご主人様はその方の想いや意志を私に込めて私を造ったのです。』

「??その人の想いを込めると、リングが生まれるの??」

私にはリングが何を言っているのかわからなかった。
リングはそんな私の様子を見て微笑んで言う。

『そうですね、きっとネオには、アンドロイドと人間の違いがよく分からないのですね。その差が無いような場所にいたのですから。私はある人間の想いを元に、人間の心に似たものを造られたのです。ですから本当には分かっていないのかもしれません。自分が寂しいのかどうかが。』


リングが言うには、アンドロイドというのは、目的があって造られるのだという。

リングは『ごしゅじんさま』に、誰かの想いを受け継いで、誰かの助けになるようにと造られた。それもリング一体だけ。
考え方や感じ方が、その誰かに似るように…人間にそっくりになるように…。

普通のアンドロイドとリングは、だから違うらしい。

『そこまで人間の心に添うように造られたのは、この時代、私くらいなものでしょうね。ジペットさんは私と似ている型でしたが、彼の方は専用の機械技師が、旧時代に子供との交流の為に造ったに違いありません。それでも私はご主人様に感謝しています。』

リングは痛がらない、強い感情があまり出ない、体が機械…
ただそれだけだと思う。

だって、ここに着いた時リングは嬉しそうだった。いない『ごしゅじんさま』を想ったリングは悲しそうだった。

それに、今までだって私とあまり変わらない気がしたから。

「…リングはアンドロイドでも、私と変わらないよ。」

リングはそれを聞いて嬉しそうに笑ってくれた。

『ネオ、ありがとうございます。ご主人様が懸命に造って下さったおかげですね。』


「…私も、目的があって作られたのかな……」

私は半分眠りに落ち始めながらリングにそう聞いた。

『ネオ、人間はアンドロイドよりも、人間同士の強い想いがなければ出来ないのです。』

「だ…って…私…捨てられた、って……」

研究所の所長は、お父さんとお母さんは私を捨てたと言った。
私が他の人と違うから…強い想いがあったのに、私は『特別』だったから……

『あの所長の言葉全てが真実とは限りません。ネオを引き止める為になんとでも言うでしょう。ネオにいなくなってほしくなかったのですから。』

「…じゃ…あ……」

そこまで言って、私の意識は途切れた。