荒廃した建物に白い砂ばかりの地面が続いていたけれど、またようやく小さな建物が見えた。

「お家、かな…?ジペットさんみたいに誰か住んでいるかもしれないね、リング…!」

私は少しだけ期待して、リングを見て言った。でもリングは前を見据えて黙ったまま。

無表情。
でも前と違うのは、今リングはなんというか、ボンヤリしている、みたいな気がした。

リングはたまに、私と変わらない感じがするときがある。
アンドロイドっていうのはほとんど私と変わらなくて、体が機械なだけなんだろうと私は思っている。


リングは乗り物を近くに停めた。

『疲れたでしょうネオ。ここで休めるといいですね。』

「え……」

違和感があった。
普通ならまず先に、誰かいるといい、とか言うと思うのに…

リングは微笑んでいる。こんなに穏やかな顔は久しぶりに見た気がした。

でもリングは、すぐに表情が変わった。

『すみませんネオ、しばらく乗り物で待っていてくれますか?』

「え…うん。」

なんだかリングは、焦った、みたいだった…。

リングは建物を囲うシールドを開け、建物の入口を開け、中に入っていく。

リング、この場所を知っているのかな?


『ネオ、おまたせしました。ここで休ませていただきましょう。』

しばらくしてリングが戻ってきて言う。

「誰かいたの…!?」

『いいえ、無人の家です。しかし設備が整っています。ここならネオもいられますよ。』

「……。」

やっぱり、何かおかしい…

『ネオ?』

「…ねえリング、リングはここを知っているんじゃない…?」

私はたまらずに言った。

「だってリング、何も調べずに建物に入っていったよ?休めることも知ってたみたいだった。誰がいるかわからないのに…。ねえ教えて?ここはどこなの…?」

『ネオ』

リングは、悲しそうな、苦しそうな表情に変わった。

「…リング……?」

『すみませんネオ。そうですね、ここは私の生まれた場所です。正確には、私の身体が。』

じゃあなぜこんなに悲しそうなの…?

「…リングが……?じゃあ、リングのお父さんやお母さんが……」

『いいえネオ。アンドロイドというのは父や母がいるのではないのです。私はご主人様に造られたのです。他のアンドロイドたちとも違います。私には共に造られた兄弟もいません。』

私はアンドロイド、というものを初めて知った。
機械だけれど私みたいに、お父さんとお母さんがいて生まれるんだと思っていたのに…
しかも普通アンドロイドに『きょうだい』とかいう、一緒に造られるアンドロイドがいることも知らなかった。

リングも、私と一緒で『特別』だったのかもしれない…

「あの、身体がつくられた、って…?ごしゅじんさま、って……」

『ネオ、中に入って話しましょうか。あなたが一緒なら、きっとご主人様も許してくださいます。』

「…うん…」

とても悲しそうな表情だった。あまり聞いてはいけなかったのかな…

リングはこの家に、誰もいない、と言った。
なのにリングが言う『ごしゅじんさま』という人は、私となら許してくれる、って…
どういうことだろう……