「ねえリング、この星はどのくらい広いの?」

『そうでした、ネオは外のことはあまり教えてもらっていないのでしたね。この星をこの乗り物で廻るとすれば、何日も何月もかかるのですよ。』

「何月も??」

毎日同じような毎日を送っていた私には、想像も付かなかった。

きっとこの先も、見たこともないものが見られるかもしれない、誰かに会えるかもしれない。それも、私の体力が持つまで。
それが毎日続くことなんて…

「…私、生きていられたらいいな…色々なもの、見てみたいもの……」

『ネオ、どこまでも行きましょう。まだ海と砂浜と砂漠しか見ていないのですから。』

リングは乗り物を操作したあと、そう言って私に優しく笑いかけてくれた。


「あ、何かある!」

小さな丸い建物があるのが見えた。

『まだ続くこの砂漠の中ですから、人間がいる可能性は極めて低いです。けれど、今は小さな可能性にも掛けるべきです、当たってみましょう。ネオ、私の後ろへ。』

リングは建物のそばに乗り物を停め、私の前を行ってくれた。

『随分古い型のセキュリティのようです。まるで忘れられた場所のよう。』

ふたりで扉の前に立った。

『どなたかいらっしゃいますか?』

リングが中に向かって声を掛けたけれど、誰の声も、音もしない。

『しかしこれならば私にも開くことは可能かもしれません。』

リングは砂に向かって小さな機械をかざし、それから私に言った。

『ネオ、あなたはあまり外は良くありません。乗り物にいて、少しの間待っていてくれますか?』

「うん。」

私は寂しかったけれど、リングは私のことを心配して言ったのは分かっていたからすぐにそうすることにした。


しばらくするとリングが私を呼びに来てくれた。

『遅くなって申し訳ありません、ネオ。誰も出てきませんでしたが、扉が開いたようです。一緒に行きますか?』

「うん、一緒に行くわ!」


リングが私の前に立って、ゆっくりと扉を開けてくれた。

二重扉を開くと、なんだか変な感じがした。

『これは機械油の匂いですね。』

初めて嗅いだ、知らない匂い。
ゆっくりと先に進むと、誰かが立っているのが見えた。

「こんにちは…えっと…お邪魔します……」

でも、その相手は動かない。
動きやすそうな服に前掛けを付けたリングみたいなアンドロイド。

『私のような、旧式のアンドロイドですね。バッテリーが使えるのなら動いてくれるかもしれません。』