目が覚めると、私達が行く先に水があった。水と言っても、私の飲み水どころじゃなくて、地面いっぱいに、たくさんある水。

『ネオ、もうすぐ海です。』

「…これが、海……」

水ばかり。
足元に水は行き来して、その先は水が広がり、とても広くて、他に何も無くてガランとして…
私は怖くて震えた。

『怖いですか?』

「…なんだか、水がいっぱいにあると、水に吸い込まれそうで…」

『確かに水は怖いこともあります。水害も遥か昔にありました。この近くには、海に沈んだ『国』があったといいます。』

「国??国が海に沈むの?…王様やお姫様のお城も、沈んでしまったの!?」

国、というのは、たくさんの人が住む集まりだと聞いたことがあった。
人が住む場所が水の中に沈むなんて、私には信じられなかった。

『城もあったかもしれません。けれど、王族は別の星へ逃げ延びた可能性もあります。この国は昔、栄華を極めていたそうです。しかし、この星の環境の急激な変化が、この国を海に沈めてしまったとか。』

「海に沈んだ国……。別の星に行った人たち……」

私は空を見上げてみた。
今日、初めて自分の目で見た空。その空よりもずっと高いところにある宇宙。

その国の人たちはみんな無事に宇宙に逃げたんだろうか?
私は行けないんだろう。この星の事さえ知らない私は、あとどれだけ生きられるかもわからない。
この星で生きて、そして何も知らずにこのまま……

「…リングは、別の星へ行きたい…?」

私の口からついて出た。

『私は』

リングは微笑んで私の手をそっと取った。

『ネオと約束をしました。ネオが行きたいのなら、行く手立てを考えなくてはいけません。』

私は嬉しかった。リングが一人ででも行きたいんじゃなくて…置いていかれなくて……

「ううん…!!リングがいてくれるならいいの…!私、この星の事も知らないから…」

『では、この星を私と見ていきましょう。そして、ネオといつまでも一緒にいられるようにしましょう。』

「ありがとう、リング…!!」

私はもう一度、国が沈んだという海を見てみた。

その海は陽に照らされて、何もなかったかようにキラキラと光っていた。