私がこうしている間にも、機械たちは水に溶けていく。

「……。」

私は一つだけ、方法を思いついた。

「リング…私の声、ここにいるみんなに聞こえるようにできないかな…?」

『ここにいる者たち皆に、人間の声を聴く機能があるのかはわかりませんが、それは出来ます。ヘッドのマイクスピーカー機能を使えるようにしましょう。』

「…私の声、それなら聞こえる??」

リングは私の耳にかぶさっているあたりにそっと手をやった。

『はい、これで。』

「ありがとう…!!」

私は周りを見渡してから、なるべく大きな声で言った。

「え〜と……みんな、聞いて下さい…!!私は、人間です…!!私たちを、助けてくれる人を探しに来ました…!私のいた研究所の人が、誰も来なくなって、私と彼は、それを調べて、助けを呼ぶために、旅に出ました。何か、知っている人はいませんか…!?」

みんなはそれでも足を止めてくれない。

「……みんな、まだ動けるのにどうして壊れちゃうの…!?私なんか何もできないけど、こうやってリングと旅に出たのに…!!動けるだけじゃだめなの…!?歩き回って、動き回って、誰かが転んだら起こしてあげるくらいでもいいじゃない…!!」

言いながら、そばにいるリングが私にしてくれたことを、自然に思い出していた。

「手が使えないなら、あっちにいいのがあるよ、って、教えてあげるだけでもいい、しゃべれないなら手をそっと引いて連れて行ってあげればいいじゃない…!!どうして…!?まだ壊れることないのに…!!」

今まで我慢していた気持ちが一気に噴き出した。
研究所の中では強い気持ちを出すとすぐに調べられてしまったから出せなかった。だからこんなに自分の気持ちを強く出せることに、自分で驚いていた。

「お願い…!!」

一体のアンドロイドの足が止まった。
するとすぐ次々にアンドロイドやロボットたちの動きが止まっていった。

そして、私たち以外はみんな動かなくなった。

「え……」

『人間の声が、プログラムされた機能を止めるようになっていたのかもしれません。役目が終わったものを溶液に向かわせる、それを止めるような。』

静まり返った、捨てられた場所。動いているのは私たちだけ。

「……。」

私は再び、地に膝をついた。

助けられなかった。ここにいる誰も…