足が震えた。こんなことは初めてだった。

さっきまで動いていた機械たちが、自分から溶ける水に向かう…前に聞いた、自殺という行動そっくりに見えた。

『きっと、ここは廃機械の行き着く先。行き場を失ったものたちが来る場所なのです。あなたに、このようなものを見せたくなかった。ネオには刺激が強すぎたのです。』

膝をつく私を支えるように、リングが私の肩を優しく抱いた。

「なんで……なんで自分から死んじゃうの…??壊れちゃうの!??だってまだ、みんな動けるのに…!!歩けてるのに…!!」

私はふらつきながら立ち上がった。

「ねえ…待って…!!」

動かずにいられなくて、近くにいたロボットにすがった。

「まだあなた、動けてるよ!?なんで行っちゃうの!?待って、行かないで…!!」

自分が置いていかれる気がした。

次々にいろんな機械やアンドロイドにすがっても、彼らは足を止めようとしない。

「お願い……!!置いていかないで…!!嫌だ……やぁぁぁっ!!」

出し慣れていない私の大きな声。裏返って、とぎれとぎれでも、出さずにいられなかった。

『ネオ』

リングは私のすぐそばに来て、私の肩をまた抱いた。すごく、悲しそうな顔をしていた。

『私が悪いのです。純粋なネオをこんなところに連れてくるのではありませんでした。この先どのようなことがあるかわからない。それでも、あなたに悲しい思いをさせてしまった。あなたを傷付けたのは私です。』

「違うの…っ!リングは、だって…!!」

『ネオ。私の大切な、守るべき人。泣かないで?どうしたら、泣き止んでくれますか?』

「……。」

リングが心配してくれている。でもここにいる機械たちに、壊れてもいないのにあんなところに行ってほしくない。

「…ひっく……壊れてほしく、ないの…行ってほしくないの……。リング…どうしよう……このロボットさんたちと、お話はできない…?」

『残念ですが、役目が終わるとここに来るようプログラムされているのかもしれません。そうなると、私だけでは手立てがないのです。』

リングは悲しそうに言って、私をそっと抱きしめた。