見渡す限り小さな小さな、ザリザリとした細かい粒がたくさん足元に落ちている。

『ネオ、砂漠の砂に足を取られないよう、気を付けてください。』

「す、な…??これが、『砂』なんだ……!!」

『ネオは歩き慣れていないのですから、乗り物のところまではできる限りゆっくり行きましょう。』

初めて歩く、外の地面。一歩一歩踏みしめた。この先どれだけ歩くことになるかわからない。それでも私にとっては初めての外だった。

空は青い。
周りは砂ばかり。
私がいた研究所が、砂ばかりの場所にたった一つだけポツリと建っていたことを、私は初めて知った。


しばらく歩いて研究所の裏側に着くと、リングは壁に触れた。
壁だと思っていたのは扉で、音もなくスッと開くと、丸い、何人か乗れそうな乗り物があった。

「これ…?動くの…!??」

『はい。地図を見たところ、周りには生物や機械の居住地点が無かったのです。これで行きましょう。古い物ですが、許可証もあります。』


ふたりで乗るには十分な広さの乗り物。

『ネオ、初めて外を歩いて疲れていませんか?この先、疲れたらすぐに私に言って下さいね。』

「うん、ありがとう。」


乗り物はフワリと宙に浮かび、音も無く前に向かって動き始めた。

私は乗り物に乗ったまま少し離れたところから、自分のいた研究所を見た。
高い塀に囲まれた、白い建物。

「…お城、とはきっと違うんだね……」

つぶやく。

『城…遥か昔にあった、皇族や王族の住居。ネオの描いた絵にあったものですね。ネオは王子様とお姫様に会ってみたいと言っていましたね。』

「うん…私、一度でいいから会ってみたいの……」

私はそれ以上何も言えなくて、砂ばかりの地を見つめた。
こんな砂ばかりの場所に、きっと王子様やお姫様はいない。キレイなお城やお花がたくさん咲いている場所なんてないんじゃないかと思った。

『皆をまとめようとする者、自身の思い通りに従わせようとする者がいれば、それはその場所での頂点に立つ者となる。そうなれば、人間であろうとアンドロイドであろうと、その者は『王』になるものです。そこに姫か王子はいるかもしれません。』

リングは微笑んで続けた。

『まだここを出たばかり。私たちの行く先に、それは存在するかもしれません。希望を捨ててはいけません。』

「リング…ありがとう……!」