「あの子は下等なのよ…。」

「進化の過程から外れたんだ…」

そう影で言われてずっと生きてきた。

産まれてすぐに連れて行かれた病院で、他の人たちと比べて私だけが進化せず、この星の気候に合っていないことがわかったそう。

そんな『劣等』な私は、両親に捨てられたらしい。
これは全部、物心ついてからこの研究所の所長から聞いた話だった。

私が今いるところは研究所。毎日のように体調を調べられて、薬を飲まされて…

「ネオ、君の両親を見返せるほど、長生きできるようにね……」

「…。」

「次の検査は数時間後ですよ。」

「はい…」

私はここから出られない。外に出たら私は生きられないと言われた。
研究所の、部屋の中しか知らない。この外には何があるとか、何も教えてもらえない…

「ネオ、さあどうぞ。」

『食事』の時間。食事と言っても数種類のカプセル。

「はい…」

疑問は持たなかった。
でもなんだかすごく寂しかった。いつもたった一人の、カプセルだけの食事。
一日ニ度のカプセルのほか、あと私の口に入るものは、一日三回何度も噛むように言われている、とても固い『ガム』、あとは飲料水だけだった。


私の行ける部屋は二つだけ。
一つは眠ったり運動したりする部屋。
もう一つの、私が一日のほとんどを過ごす部屋は、『一日を過ごすためだけ』の部屋。私の描いた絵と道具以外は何も無い。

ただ、前に具合が悪くなった時、すぐに誰かが駆け付けてきた。誰がが一緒だったわけでも、誰かに言ったわけでもないのに。

寂しいと強く思ったときもそう、すぐに先生が来てくれた。
水が飲みたくなったりすると必要な分の水が出てきて、時間になれば『食事』をくれる。
私の強い感情すらも読み取るこの部屋に、私はずっといる。

私は『生きて』いるのかな…?


「ネオ、今日は数式の勉強ですよ。」

私の先生。
数式と言語を教えてくれる。

「…先生…質問があります…」

「なんですか?ネオ。」

「…私がいるこの研究所の外は…今どうなっていますか…?」

私の質問に先生は困った顔をして笑い、そのあと言った。

「……私も、良く知らないのです。私達も、あまり長い時間外に出ていられないので。誰も詳しく調べられる人がいない。だから外の分析をするためにも、この研究所があるのですよ。」

嘘。
私に何かを知られたくないから、外のことを教えてくれないんだ…。

「そうですか…わかりました……。」

私は今まで何度したかわからない、納得したふりをした。