スタンドバイユー

あたしは、彼のくちびるに、自分のくちびるを押し付けた。




不器用なあたしのキス。




それでも優しく受け止めてくれるんだね。





ねぇ。





このまま、時間が止まってしまえばいいのに。




ずっとずっと…。






甘い空間に秩序響いたのは、スマホの呼び出し音。





彼は人気俳優の有樹 愛なんだ。






「ごめん。好。仕事の時間だ。」





あまりに近くなった距離に、忘れそうになる、事実。




「ううん。お仕事、頑張ってね」




「あぁ。じゃあ明日、9時にな。寝坊すんなよ」





彼が言って、




「うん。楽しみにしてるね」




ドアの閉まる音。




この瞬間がいつもすごく寂しい…。